開戦
夜会編スタートです。
今日は、アリスの夜会復帰の日。
娘のエスコートをしたかった辺境伯の気持ちに気付いたアリスが、宮殿で待ち合わせにしたいとお願いしてきたので受け入れた。
会場前で一人アリスを待っていると、「お一人ですか?」「聖女様を待っているのですか?」と群がられたので睨みを効かせて離れてもらう。
これからアリスを迎えるのだ。
それなのに、令嬢たちの隙間から現れる婚約者なんて格好がつかない。
控室で待っていることを従者に勧められたが、アリスが馬車から現れた瞬間に、外野にはアリスを諦めてもらわなくてはならない。
アリスは世界一可愛いのだから、婚約者としてはそれくらいしないと。
アイティヴェルの馬車から舞い降りたアリスは、美しさの全てを合わせたような姿だった。
「アリス、綺麗だ。」
「素晴らしいドレスを有り難うございます。アディも素敵です。」
アリスが辺境伯のもとから離れて、俺の手を取り微笑んでくれる。
可愛いアリスに倒れそうだが、学園で毎日エスコートしているので自然と身体は動いた。
アリス、本当に綺麗だ。
裾にいくほど濃くなる蒼色の生地に、黒のレースを使って大人っぽい仕上げになっている。
ウエストの水色の大きなリボンが、大人っぽすぎないように纏めてくれるのだと店主が言っていたが、本当にその通りだった。
ドレスの刺繍は全て黄金色で、アリスの好きな花柄もポイントだ。
ドレスに合わせて装飾品も贈っていて、アリスが俺が贈った物を身に纏ってるなんて感無量だ。
「アル、顔が緩みすぎだ。」
ミハエルが声をかけてきた。
先日のお茶のあと、俺は義兄弟になるのが目標だから親しくしてほしいと提案していた。
「お兄様、アディといつの間に‥‥」
あ、しまった。
辺境伯夫妻がアリスの後ろで礼をしている。
「辺境伯。アリスのエスコートをさせて頂くこと光栄の極みです。この場における不埒な者、不審な者、無礼な者から可愛いアリスを守ると約束しましょう。」
何故か辺境伯夫妻は驚いた顔で無言のままだ。
それに、アリスの両親なんだから身分関係なく話しかけて構わないんだけどな。
「待て待て待て、アル飛ばしすぎだ。父と母が驚いてるじゃないか!」
何故?
「アリスはよく平気だな。」
「最初は驚きましたが、アディはいつもこんな感じで優しいです。」
優しいって思ってくれていたなんて!
「ユアランス様、本日は娘のエスコートをどうかよろしくお願い致します。」
もちろんです、と俺は笑顔で答えた。
呼び方は後で話し合いの時間作るからその時に直してもらおう。
様々な思惑と戦いがある夜会です。
アリスを頼んだよ!アディ。