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アイティヴェル辺境伯家ミハエル

□アイティヴェル辺境伯家ミハエル

前回、前々回のウィルの話の続きです。

 


 

「そういえば、アル。婚約者殿に魔道具を作ったんだって?」

 

 魔導具?

 

 アリスが最近もらったと話していたのは、弁当箱と水筒のはず。

 魔道具とは?

 

「ただの弁当箱と水筒だ。」

 

 あれが魔導具? 

 アリスは喜んでいたが、色気皆無の贈り物だと思ったものだ。

 

「温度維持機能が付いてるのだろう? アグニエイトで購入したいのだが、販売はしないのか?」

 

「あれは、アリスのために作っただけだ。」

 

「まさかレオ、あれを買うのか? 弁当箱ひとつで貴族の邸が立つぞ?」

 

 は?

 

 ファンブレイブ様の説明では、ユアランス様が魔石の加工を行ったらしく、恐らく皇宮の魔導師が調べても簡単には解読できない設計図だということ。

 

 破損防止はともかく、温度維持と清潔維持なんて魔法は聞いたことがない。

 

 更に、ユアランス様が膨大な魔力を込めて、何年も使えるような貴重な物であるそうだ。

 

 なんて物を妹に渡しているのだ。

 そして多分、妹はそのことを知らない。

 

「いやいや、もっと性能を落とした物が欲しいのだ。騎士の遠征に良いかと思ってな。」

 

 確かに、寒さや暑さ対策に良いかもしれない。

 アイティヴェルでも欲しいな。

 

「アル。簡略化した設計図を販売しないかい? 辺境伯家でも役に立つだろうから、アリス嬢も喜ぶと思うよ?」

 

「アリスのためならやろう。但し条件はある。」

 

 こんな奴だったか?

 

「アリスにこの話をしないこと。それが条件だ。」

 

 兄としては妹が身に余る程の贈り物を頂いたという認識だったが、ユアランス様にとっては婚約者のための唯の弁当箱らしい。

 

 正気か?

 

 喜んでくれていたアリスが、価値が付けられたせいで萎縮してしまうのでは意味がないと言う。

 

 あぁ、この男はアリスのためなら何でもしてしまうのだろう。

 

 剣を振るのも、魔法を学ぶのも、この帝国に居ることでさえアリスとの未来のためだと、この五年間散々聞いていると侯爵令息たちが教えてくれた。

 

 

 

 五年前、目を覚ましてしばらくたった頃、アリスが婚約を解消させて欲しいと両親に伝えた。

 

 長い間目を覚まさなかったアリスは、肌も髪も爪さえ荒れてしまい、身体も随分痩せてしまった。

 そんな娘が泣きながら伝えた願いを、父上は了承し、侯爵家に連絡してくれた。

 

 しかし、侯爵家からは「責任は取る。解消はない」という内容の返事が来た。

 

 当時は、聖女と恋仲の癖にアリスの身分を保身に使うつもりか、と酷く苛立った自分が居た。

  

 アリスは、聖女のことで悩み、嘘をつかれてからは婚約者とまともな会話ができなくなる程に傷付いていた。

 

 頻繁に涙を溢し、段々に食欲すらなくなっていた。

 

 それでも、アリスは婚約者を庇って傷を負ったことを後悔しない優しい子だった。

 

 両親を説得し、婚約は解消したとアリスに嘘をつき、アリスには好きなことをして領地で療養しようと話した。

 

 今思えば、そうして幼い妹の心を守っていたつもりが、唯の不器用な婚約者同士を引き離してしまったのかもしれない。

 

 アリスが婚約者を忘れようとして過ごしている一方で、アルグランデは連絡ひとつ寄越さないアリスをずっと想っていた。

 

 

 

「義兄上、俺はこの五年間をアリスに相応しい人間になるための訓練期間だと思っています。」

  

 そう言ったユアランス様が設計図のことで魔導師に連れて行かれて、アグニエイト様はそれについていった。

 

 

「ミハエル。五年前のことは、アルが今のように愛情を伝えていなかったことも原因のひとつであり、アルはそれを分かっているよ。」

 

 今のように?

 まさかアリスの前でもこの調子なのか?

 

「弱虫だったアルはたくさん泣いて、努力して、今のアルになったんだ。アリス嬢のお陰だね。」

 

 殿下がにっこりと笑った。

 

 

 

 

ミハエルはイケメンです。

アリスの実兄ですから。

がんばれ!ミハエル

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