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皇太子殿下 ウィリアム ③





 今頃、アルはユアランス領で楽しく過ごしているだろうか。


 先日、遠回しに遣いを送ったとこに気付いたアルから、フロー様が手紙を受け取りに来た。


 そう来るだろうと思ってたから、用意していた手紙をすぐに持たせた。


 まさか手紙を水筒にいれてやり取りする日が来るなんて。

 いや凍ったり濡れたりしないためには、最適な方法だったのかもしれないけど。





 現在、皇都では聖女失踪が大事件になっている。


 教会すらも行方が分からないと言い、皇室と教会がピリピリした状況が続いている。


 学園が休暇に入ってから、聖女には一度も会っていない。

 それなのに、恋仲な聖女を私が隠しているなんて噂がたったときは、さすがに苛立ちを覚えた。


 そもそも、どこから恋仲なんて噂が出てきたんだ?


 調べて行くと、数日前に怪我をしている聖女の目撃証言があった。


 嫌な予感がして、私は初めて教会内部を正面から調べることに踏み切った。


 すると出てきた事実に、衝撃が走る。



『聖女様を助けて下さい!!』



 告発してくれたのは、教会で働くの補佐役の女性だ。


 教会内で男性職員に襲われそうになっていたところを、聖女に助けられて、それからずっと慕っているそうだ。

 それでも 、内部告発をして家族を危険に晒すことは、彼女にはできなかった。


 神聖な存在とされる聖女を、自ら穢し虐待しているなんてスキャンダルを教会が許すはずもない。


 何度も内偵させていたのに、これまでこの事実が出てこなかったのは、聖女本人が徹底して隠していたから。

 彼女自身も、養父を盾に取られていたと聞く。


 悍ましい場所だな、教会は。

 告発ひとつでは、皇室の力で訴えても勝算は無いに等しいのだから。


 聖女が自ら失踪したとして、何故このタイミングなのか。

 イグニドアが調べた結果、聖女は北行きの乗合馬車に乗っている。

 何故この時期に豪雪地帯にもなる北に向かったのか、宛があったと言うことなのだろうか。


 ふと浮かぶのは、アイティヴェル辺境伯領地だ。

 休暇前にアリス嬢が手紙を渡していたが、アリス嬢本人から『頼まれた』と聞いている。


 だが、アリス嬢は送り主を『言えない』と言ったのだ。

 皇太子である自分にそう言うということは、家門に関わる秘密だから手続きを踏むしかないということ。


 あの手紙がトリガーに?

 時間が空いているのは準備期間だったのだろうか。


 アリス嬢自身の関与の可能性は低いだろう。

 彼女は今ユアランス領に居るはずだ。

 その確認も取れている。


 ミハエルもあの様子なら違うな。

 聖女から全力で逃げていた。


 直系のご令嬢であるアリス嬢に口止めできるのなら、真っ先に浮かぶのは辺境伯か先代辺境伯。

 けど、アイティヴェル辺境伯家はそもそも聖女を拒絶しているのだから、手紙を贈るというのは考えられない。


 手続きをしてアイティヴェル辺境伯家を調べるか?

 いや、ないな。

 聖女のことでの調査など、アイティヴェルを不愉快にさせるだけで、労力の割に損ばかりする。


 それなら、なんとか聖女保護して、皇室所属の魔導師にする方が難易度低そうだ。




「これは?」


 レオが見つけたのは、凝ったデザインが可愛らしい小瓶だ。

 それも数種類ある。


「アルが送ってきた傷薬。血だらけになったら試してくれって書いてあって、いつ試そうかなと思ってるところ。」


「血だらけの深い傷であれば、傷薬に頼ってる場合では無い気がしますが」


 エドの言うことが普通だな。

 まぁ体内に害がないなら試しても良いかと思ってる。


 そんなことを考えてたら、レオが自身の腕をスパンと切った。


「傷薬、もらって良いか?」


「良いけど、何でレオが試すかな。」


「レオ! なんてことを!」


 驚いたエドがレオを凄い勢いで説教している。

 当然だな。 


「アルが送ってきたなら、誰か試してる物なんだろう?」


「ユリウスが討伐任務中に試してるそうだよ。」


「は!?」


 レオが何かに驚いて、慌てて血を拭くと、傷薬が塞がって血が止まっていた。


「何ですかこれ……いくらなんでも治りが早すぎる!」


「アルは何て言って送ってきたんだ?」


 簡素な手紙を見返す。


「えっと『ユリウスが討伐任務で使用したら良かったから、もったいないけどウィルにもあげる。血だらけになったら使って』だって。」


「アルだった。」


「アルだったな。なにも分からない。」


 いや、私には察しがついている。


 使用したのがユアランスの直系ユリウスであり、時期的に察するに討伐任務中。

 ならば、安全を祈って贈られた物だと推測される。

 加えて、アルが『もったいない』と言う。

 奴はユアランスの特産品にもそういう感情は持たないだろうから、これは恐らくアリス嬢が用意した品。


 アリス嬢は、エトール嬢に化粧品を用意したことごあるらしけど、まさか薬も?


 あからさまな自慢をしてこないのだから、アルもコレの価値を分かっていて、作り手を明記できないのだろう。


 しかし、どうやったらこんなにも効能の高い傷薬が作れるのだ?


「この件は一旦アルに任せておこう。それと、良い香りの保湿クリームとかもあるらしくて、これエドとレオにもあげるね。」


「…………これ、アンジェにあげても?」


「内密にしてくれるなら良いよ。」


 エドは素直になったよね。

 とりあえずアルには、聖女が来たら保護してと伝えておくか。




 

 

アリスが買った瓶がこれです。

追加で作成することを買い物の内容で察した

アルグランデが作成を依頼しました。


聖女失踪については次章で(予定)


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