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罪は償わせる





 翌日はゆっくり起きた。

 アリスに『体を労ってゆっくり起きましょう』と言われたから、早起きは中止した。 


 俺が普通通り起きてアリスを待ってるって、アリスは察して言葉にしたのだろう。

 アリスは優しい。


「昨日は遅くまでご苦労だったな。」


「主君の初恋を見守るのは私の仕事ですから。」


「いつからそんな仕事が……?」


 昨日アリスと温室でふたりきりになれたのは、ビリーとハンナの配慮によるものが多い。


 温室の扉は寒いから閉めておきたかったが、未婚の男女をふたりきりにさせてくれるほど貴族の価値観は優しくなかった。


 だが、ビリーが『不適切な何かがあったら銀世界になりますから、即踏み込みます。』と言って、他の使用人の配置を減らしてくれた。


 ただ、『主君だけの可愛い姫君の姿を使用人に見せるなんて無様なことはさせないでしょう』と俺に言う姿は、笑顔なのに圧が強かった。


 そもそも!

 まだ婚姻してないのに不適切なことはしないから!


「今日は姫君とデートですか?」


「疲労が蓄積してるだろうから、今日はお茶と晩餐を共にする約束をしている。」


「懸命ですね。さすが主君の姫君です。」


 ビリー、何故アリスの案だと分かったのか。






 アリスに会うために身支度を整えて、お茶の約束をしている場所に向かうと驚きの光景が。


 ルティがアリスに両膝ついてひれ伏している。


 どういう状況?


「申し訳ありませんでした!!!」


「あっ、アディ。おはようございます。」


 アリス、ルティの謝罪を完全なるスルーである。

 今日も笑顔が可愛い。


「待たせたかな? こんなのに絡まれてるって分かってれば、早く来たのに、ごめん。」


「一方的に謝罪されまして困っているのです。私は許すつもりなんてないのに。」


 うん、笑顔だ。

 アリス、怒ってるね。


「状況を教えてもらっていい? アリスは悪くない、ってことしか分かんなくて。」


「ハンナ。」


「かしこまりました、お嬢様。」


 あ、ハンナに投げた。

 まぁ怒ってる状態で感情的になってしまうの事態を、アリスは回避したのだろう。


「ルティ様が不躾にもお嬢様の部屋をお訪ねになり、無礼極まりなく話がしたいとおっしゃいまして、お嬢様が『男性を部屋には入れられない』と返答し、此処に来た次第でして、現在ここうして無様なお姿でお嬢様を困らせております。」


 ハンナが華麗に手厳しい。

 不躾、無礼、無様と並んだ。


「アイティヴェル嬢」


「黙れ。せめてその格好を解いてから出直せ。」


「………はい。でもアルグランデ様が伝えちゃったからこうして」


 訴えてくる上目遣いがうざい。

 消えてほしい。


「俺は話していない。アリスはお前のこと最初から気付いていた。」


 アリスはつーんとした態度のままだ。

 今日になってこういう態度ってことは、昨日ルティは酒でも飲んでいたのか?




 数分後、着替えたルティが再度謝罪に来た。

 元々中性的な顔だちで、普通に美男子なのだと前にリンが言っていた。


「妹がアルグランデ様の婚約を聞いて寝込んでいて、何かちょっと嫌がらせしてやりたくて。」


「妹なんて居たか?」


「あ、えっと、非公式な妹でして。」


 ルティの母親は不倫して、離縁している。

 つまり、その不倫の結果の娘が居るのだろう。


 なるほど。

 ならばこれの醜態を父親には知られるわけにはいかず、アリスに平謝りして許しを請うしかない。


「妹、ですか。」


 アリスの瞳が俯き、何か思いつめるような表情がのぞく。


「ルティ。俺はアリスとしか婚約も婚姻しないし、生涯アリスだけだから。」


「………はい。」


 額が床についたままである。 


「アリス、処罰は父上に委ねていいか?」


「私にも嘆願する機会を頂けますと有り難うです。」


「そう伝えよう。」


 何を嘆願するのだろう。

 正直、娘大好きアイティヴェル辺境伯による処罰だと、ユアランスより厳しいと思う。

 アリスが厳しさを求めるとは思わないけど、ならば減刑を求めるのか?



 女性を偽って虚言暴言を吐き、アリスの部屋にまで入ろうとした罪は償わせるけど。




 それからルティを父上につきだして、アリスとお茶を楽しみ、晩餐を楽しく過ごした。


 父上は女装は変装だと聞いていたらしく、来訪の目的はウィルからのお遣いをリンに頼まれたかららしい。


 事を荒げるとイグニドアにまで飛び火するから、派手な事をしても軽度の処罰で済むと思っていたらしい。



 

 

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