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皇太子殿下ウィリアム ③

□皇太子殿下ウィリアム

 


 アイティヴェルは辺境の土地を護る役割を担っており、国としては四大侯爵家で【護】の役割を持つユアランスの管轄下になる。

 

 その二家に誤解があるのは望ましくない。

 

 


「義兄上、お久しぶりです。」

 

 到着したアルの第一声はこれ。

 

「義兄ではない。それにまずは殿下にご挨拶申し上げるべきだろう!」

 

 アリス嬢の兄ミハエル・アイティヴェルは、私たちの二つ上の歳であり、真面目で優秀な成績を修めているが魔導師としても実績を重ねている。

 

「まさか結婚に反対なのですか‥‥‥‥?」

 

 アルの頭の中には、多分アリス嬢に関することしか入っていないのだろう。

 

 四大侯爵家の令息と皇太子である私たちは、アルとアリス嬢が出会ったお茶会以来の友人であり、アルのこの様子には慣れている。

 

 アルは、アリス嬢以外にはどう思われても構わないのだろう。

 

 先に到着していた侯爵令息たちは呆れ半分、苦笑半分といった感じでアルとミハエルを見ている。

 

「殿下、この度はお茶会にお招き頂き有り難うございます。」

 

「さすがに遅いよ、アル」

 

「アリスに贈る装飾品に悩んでしまって遅刻しました? いや、遅刻はしてません。」

 

「挨拶くらいしっかりしてないとアリス嬢は嫌がるんじゃない?」

 

「即、改めます。皆様お久しぶりです。アルグランデ・ユアランスです。」

 

 私とアルと同じ年で共に学園に通う、【知】の侯爵家エドワード・ファンブレイブが「昨日会いましたよ」と笑っている。

 

 

 今日は、四大侯爵家の令息とミハエルだけの、男だけのお茶会ということで私が主催だ。

 

 本当はもっと平等に人を呼びたかったけど、アルは他人に興味が無さすぎて友達が少ない。

 ミハエルの方も人を呼びたかったが、あまり呼んで揉めると面倒だからね。

 

 ミハエルは妹のアリス嬢をすごく可愛がっていて、それ故に誤解があると思うのだよね。

 なんせアルの子ども時代は、おとなしすぎて無口だったのだから。

 

 この場のことは不敬に問わないという書類を用意したので、全員に署名をもらった。

 ミハエルは真面目だから念のためね。

 

 

「ミハエル、君は知ってるかな? 七年前の事件を。」

 

 真剣な声色に変えて私はゆっくりと話始め、それに合わせてアル以外の面々が真面目な顔付きに整えた。

 

 事件という物騒な単語に、ミハエルまで真剣な顔になる。

 

 アルだけのんびりお茶を飲んでる。

 黙っていてよね、アル。

 

 七年前、とある貴族の令息がお茶会で出会った女の子に一目惚れして、その日のうちに両親に婚約したいことを伝えた。

 しかし、子どもの幼さを考えて両親は反対したところ、その子どもは悲しくて涙が止まらなくなった。

 そしてその夜、その貴族の邸は氷の要塞へと変貌を遂げた。

 

 ここまで話しといてなんだけど、何でミハエルは気が付かないの?

 七年前、お茶会、氷。

 ヒントはたくさんあるのに、一目惚れが信じられないのか?

 

「それがユアランス侯爵家だ。」

 

「え 」

 

 貴族としても邸の規模は様々だ。

 氷った邸が侯爵邸だなんて、事態の深刻化は避けられない。

 それだけの魔力を放っても、アルは気絶することもなく泣き続けていた。

 そんなこと、私だって、四大侯爵家だってできないと思う。

 

「そのときの一目惚れされた女の子こそ、アイティヴェルのアリス嬢だ。」

 

「はぁ!?」

 

 ミハエルが驚きの声をあげる。

 

「一目惚れに驚いた?」

 

「はい、いや事件のことも」

 

 ミハエルの驚き方からして、アルのアリス嬢への気持ちは伝わってなかったのだろう。

 事件のことはユアランスで独自に解決したこともあって、侯爵以上のみの極秘になったから知らなくて当然だ。

 

「何故ですか? 俺は初めてあったときからずっとアリス一筋ですけど。」

 

「貴様! 聖女と浮気しておいて何をっ」

 

 あー、やっぱりそうなるのか。

 しかし、五年前の事件ではなく浮気を咎めるなんて、当時アリス嬢はアルを慕っていたのだろうな。

 

「アリスは、貴様に裏切られて泣いていたんだぞ。枯れるのではと思うほどに。そしたら今度は魔力の暴走だ。」

 

 これはマズイ。

 

「聞きましたか、殿下。もう二度と聖女の調査依頼は受けませんからね。」

 

 

ウィルの回まだ続きます。

この章では出番多いですが、今後誰の回が登場するのかもお楽しみに!

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