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怒ってる?



 父上の用事は、魔道具の相談をしたい貴族が居るらしく、今日のところは顔合わせだけしてほしいとのことだった。


 アリスをひとりにする理由は全くなかった。


「アリスと一緒じゃないのか?」


「父上の執事が俺だけを名指しして呼んだので、アリスが気を遣って残ったのです。」


「なんだと?」


 父上が執事を睨みつけた。

 やっぱり親子だな。


「申し訳ありませんでした。ずっと一緒におられたので挨拶しにくそうにしてる方もいて…… と思ったのですが、配慮に欠けた言動でした。」


「事の重大さを分かっているのか? 我が義娘は可愛いのだぞ。そんな義娘に何かあったら、領都が氷漬けになったとしても我が息子は報復する。更に言えば、アイティヴェル辺境伯家が出てきたらこの国は一気に傾くのだぞ。どんな要人より慎重に丁寧に対応しろ。それに婚約者抜きで話したいなんて奴らに気を遣う必要はない。」


 執事と周りの人間の顔色が悪い。

 魔力の抑えを外した父上を久しぶりに見た。

 俺と同じ氷魔法が使えるので、ちょっと寒そう。


 魔力を感じ取れる貴族はザワついているし、こうして遠くからでもアリスを害しようという輩を牽制しているのか。

 見習わなければ。


「名は?」


「ナイード・カロンディと申します。」


 カロンディね。

 アイティヴェル辺境伯家より家格が下になるうえに、特段気に留めることもないような家だ。


 父上に任せることにして、俺はアリスの所に急いで戻ることにした。




 そのとき、強い魔力に体が反応した。

 ヴィーツアとフローだ。


「アリス!」


 駆け寄った時にはアリスの足元にヴィーツアが、すぐ傍でフローが顕現していた。


「アディ!」


 アリスを抱きとめ、ビリーに視線をやる。


「酔っぱらいが不敬無礼満載な態度で主君の姫君に声をかけ、しつこくダンスに誘い、精獣様が顕現しました。」


 もちろんビリーは精獣を付けていたことを知っていた。

 さりげない飾り程度に見えるように魔力を練り、ヴィーツアとフローが “宿っても良い” と合格を出す出来にするのは難しく、ビリーはその練習を見ていたから。


「御守りってまさかの物理だったのですね……」


「そのまま置いてったらアリスが気を遣うと思って、工夫をこらしてみた。なかなか難しくて、成功してよかった。」


 周りが騒然としている。

 客人たちの多くは『こんなに近くでお目にかかれるなんて』『婚約者様に不敬を働くだなんて』と言う反応だ。


「アディ。私、少し休みたいので下がりますね。」


「なら俺も」


「いえ。その方をお任せしますね。侯爵様に判断は任せますが、大事にならない方を望みます。」


「分かった。なら部屋まで送らせる。」


「結構てす。ハンナ」


 ハンナだけ呼ぶとアリスは歩き出してしまったので、俺と目があったウィーツアが追いかけてくれた。


 アリス、怒ってる?


 顔面を両手で覆ったビリーが悲壮感を露わにしているので、これは何かあったな。





 酔っぱらいは父上に任せて、俺は自室に戻ってからビリーの報告を聞く。



 ビリーは、魔力が少ないが魔力操作能力が優れていて、魔力を耳に集めることで聴力を高めることがてきる。

 この稀な能力を知られたら、エドとかリンあたりが欲しがってきそうなので秘匿している。


 事前に決めていた通り、俺が離れてる間はアリスの会話が聴こえる範囲で待機し、何かあったらすぐに準備できるように備えていた。


「俺とルティに……関係? 関係?? 関係とは??」


「深呼吸しましょう。こんなときは深呼吸だと、主君の姫君が仰っていました。」


 すー。


 はーっ。


「ルティは男なのに、肉体関係? 男色を疑われているのか?」


「ルティ様、女性の格好していましたよね。」


「まさか、アリスと離れている間に恋人を作り、情事をする関係になっていた、と思われているのか?」


「まぁ………………… そうですね。」


 ビリーも言いづらそうだ。

 これもそれもルティが嘘ばかりつくから!


「さて主君。お怒りなのは分かりますが、この夜更けに女性として認識されているルティ様の所へ苦情をいれに行くのは賛同しかねます。それに、早く姫君を誘わないといけないのでは?」


 今日は年末最後の日。

 家族や恋人と過ごし、感謝や愛を伝え、日付が変わる前後一時間の流星群を眺めるのがユアランスの風習だ。


 当然アリスを誘うつもりでいたが、バタバタとすれ違ってしまってまだ誘えていなかった。


 同じ邸に居るからと、後回しにしてしまったことが悪手だったな。



 

 

体調を崩してました更新が遅れました。

読んで下さり有難うごさいます!

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