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ユアランス候爵




 妻が双子を連れてアリスに会いに行き、現在はアリスが絵本を読み聞かせを任せて、その間に使用人たちとパーティーの打ち合わせしてるらしい。


 ならばと呼び出したアルは、あからさまに不機嫌だし、ノアルトはそれをフォローする気はなさそうだ。


「お前、学園でもアリスにベッタリなのだから、ちょっと呼んだくらいでそんな顔」


「こっちに来てから若干の嫌がらせを受けていまして、アリスにあまり会えていないのですよ。」


「は?」


 アルから聞いた話は衝撃的だった。


 アルに対しては、やたらと届く公務の書類、会いに行こうとすれば妨害が入ることもある。


 公務の書類と言っても、些細な陳情書みたいものが多く紛れているらしく、ビリーが再仕分けして送り返しているとか。


 アリスの方も本邸の使用人をつけていたはずなのに、ハンナだけを連れて移動していたとリドから報告があった。

 優しいアリスのことだから、使用人を確実に遠ざけなければいけない理由があるということ。


 嫡男の婚約者に、嫌がらせなんて悪質な行為ができるということは、それなりに立場のある使用人たちが関わっているはず。




 アイティヴェルの使用人は、仕える主に絶対の忠誠を持ち、引き抜きの話は後を絶たないが、それに応じた使用人はひとりも居ないと聞く。

 それはハンナだって同様で、そのハンナがアリスに含みを持つ使用人を傍に置かせるわけがない。


 本邸の使用人は、アイティヴェルの使用人の優れた慧眼にかなわなかったようだ。


 ため息がでるくらい許してほしい。


「処罰のリストをつくるから証人を用意して名をあげさせろ。」


「それが、それではダメなんです。アリスがそれを望みませんから。」


「何故だ。」


「アリスは、アイティヴェルですから。」



 その真意を察して、ゾッとした。



 アイティヴェル辺境伯家は英雄の家門として有名だが、本当に恐ろしいのは “革命の貴婦人” だと貴族ならば皆が知っている。


 アリスの祖母にあたる先代辺境伯の夫人。

 アイティヴェル領地を富ませ、それに留まらず帝国の経済に激震を与えたとてつもない人物。


 社交界では、彼女の纏う品が流行になり、彼女の発言が貴族の新たな価値観になる。

 そんな貴婦人だった。


 そんな女傑を祖母に持つアリスが、ただのか弱いご令嬢なわけがないということか。


 戦って斬り伏せる英雄の家門。


 だけど、“愛と誠実” を信条として掲げる家門でもある。


 だからこそ、五年前に教会と縁を切ったアイティヴェルを責めることは、どの貴族にも、陛下にだってできなかった。

 実際にアイティヴェルに見限られただけで、貴族と民から信用をなくし、没落する家門がいくつもあったわけだから本当に怖い。




 ドアをノックする音が響き、リドの声が聞こえた。


「旦那様、お話中に申し訳ありません。」


 許可を得て入室したリドは、複数の使用人たちが自分とアリスへの謝罪の場を求めているという相談だった。


 なかには泣いて叫びだす者も居るそうで、リドもかなり困惑していた。


 リドとしては、アイティヴェルのご令嬢への嫌がらせが発覚した事を重く受け止め、それ故にこの場にまで急ぎ参ったのであろう。


「さすがアイティヴェルの姫君ですね。」


 ノアがのんびりとした口調でアリスを讃えた。

 いや、そうなんだけど、何したんだアリス。


「俺の愛しい婚約者であるアリスは、侯爵家の使用人を改心させる能力を持っているようですね。女主人としての素質は十分であり、これには先代侯爵夫妻も黙ることになるでしょう。」


 よくよく聞けば、アリスは罰したり、嫌がらせで返すようなことは何ひとつしていないそうだ。


 先代侯爵夫人の側仕えに命令されて、嫌に思いながらもアリスをアルから遠ざけることに加担するしかなかったと使用人は話しているようだ。


「掌握術でしょうか? 一度学んでみたいですね。」


「ノア。アリスは多分そこまで意識してないからやめてくれ。」


 意識してなくても、こうなのか。

 ほんとに息子はすごいご令嬢に一目惚れしたものだ。


 アリスの意思を確認して、それから場を設けるか決めることにした。




 

 

息子を呼び出した理由にたどり着いてないので

まだ続きます。

それと、アリスは良い子です。

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