剥がしていい?
今日は父上たちが帰省する日だ。
パーティー直前すぎると思うが、母上と双子は準備とか体力とか大丈夫なのだろうか。
「おかえりなさい。」
皇都を出るときに『行ってきます』と出てきたのに、行き先で『おかえりない』って言うのは変な感じもする。
「ただいま。皆も出迎えご苦労。アリスも良く来てくれたな。道中や領地で不便はないか?」
「お気遣い有り難うございます。楽しく過ごしています。」
実際は、来てすぐに二度も泣かせてしまったが。
父上がアリスに声をかけている間に、まだ寝惚けた双子がアリスの足元に歩み寄ってくる。
「姉さま、抱っこして」
「姉さま、ぎゅってして」
手を伸ばしてアリスにおねだりする。
どうしてこんなにアリスに懐いているのか。
「グレン、アレン。兄様で我慢してくれ。」
「そうですよ。姉君はひとりですから、ふたりは抱えられません。対して兄は3人居ますから平等にできますね。」
グレンを抱えて、アレンに手を伸ばしたがノアが横から拐っていった。
「へへっ。兄さま、好き」
「ありがと、ノア兄さま」
グレンとアレンは末っ子だけあって兄弟のなかでは、甘えん坊なところがある。
今もグレンはすりすりと甘えてきて、アレンはノアに強めに抱きついている。
その後は、皆で揃って食事して、家族専用の部屋にて会議だ。
家族専用と案内したのが良くなかったなかったのか、アリスには辞退の申し入れをされたが、父上が許可をして母上が引っ張り込んだ。
それに、正確には家族以外にも立ち入りもする。
今もビリーが給仕しているし、役職持ちの執事だけが仕事のときだけ立ち入りが許されている。
それより今は、俺の右側にへばりついてたアレンが足を枕にうたた寝してるのはともかく、アリスの左側でグレンが同じようになってるのは気になる。
「アリス、重くない? 剥がしていい?」
「平気です。それに可愛いのです。」
アリスが笑顔なので、グレンを回収するのは諦めた。
父上が「お前は幼い弟にまで嫉妬するのか」と呆れているが、そこは気にしないでおこう。
「あら、ふたりが懐くなんて珍しいわね。」
「私が一緒に遊んだりしても大丈夫でしょうか?」
「もちろんよ! 男ばかりで将来が心配だったりするもの」
母上曰く、男兄弟だけだと女性への機微が分からなかったり、それこそ物理的な距離感や力加減が分からなかったりしないか不安もあったらしい。
いやしかし、双子は四男と五男なんだが?
次男か三男のあたりでその不安に気付かなかったのか?
「ユリウスは一番活発的でしょう? 幼い頃から剣術に夢中で、男性ばかりの騎士と過ごす時間も長かったけど、何故か淑女への対応は大丈夫なのよね。」
「ノアの影響では?」
ノアは他所では紳士的な態度を崩さない。
俺と違って微笑みもするし、柔らかい印象がある。
「ユリウスはあんなに冷たくないわよ。ノアルトはアルグランデにそっくりよ。ユリウスは私に似たのね。」
親と兄では評価が異なるらしい。
まぁユーリには含みがないって意味ではそうか?
その後は、お茶を飲みながら色々と雑談し、双子も寝てるので早めの解散になった。
アリスに張り付いたグレンがぐずっていたが、慣れたようにノアが剥がしていった。
グレンとアレンは可愛い!
見た目そっくりな双子です。
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