弟の使命
俺が婚約者を抱きかかえて、アリスが宿泊している客間に入っていった。
それは瞬く間に邸中に広まったけど、弟たちが部屋の前まで一緒にいたからか、幸いにも悪い噂にはならなかった。
アリスは泣いてる顔が恥ずかしかったのか、俺にしっかりつかまって顔を隠していたから、あのお茶会で三人も泣いたという事実は広まらなかったようだ。
俺たちが部屋に入ったあと、ノアとユーリが何かした気がする。
泣いてるアリスを休ませるためにと言って、ハンナが俺を締め出したので俺はノアルトの部屋に来ている。
ノアルトの部屋は俺の部屋以上に物がない。
家具の色も選ぶのが面倒だという理由で統一していて、オシャレだとは思うがまだ達観するのは早い気がする。
ちなみに、普段は皇都に住んでいるが、皇都の部屋も大差ない。
「姉君は大丈夫でしたか?」
「あぁ。婚約者の努めを果たなかったと謝られたから、否定しといた。」
俺が婚約者として紹介して、アリスが挨拶をした。
この事実だけあれば十分だ。
「姉様、可哀想。あんな陰湿に絡まれてさ。ニヤニヤして嫌味ばっかり!」
使用人全て下がらせているが、それでもユリウスは正直すぎる気がする。
「兄上、姉君は何かおっしゃっていましたか?」
これはユアランスの問題なんだし、弟には正直に話しても良いかな。
「また俺たちと祖父母でお茶会をしたいそうだ。それと、あんなふうに泣いてしまって、お前たちの立場が悪くならないか心配していた。」
「姉様優しい!」
ユアランスは、実力主義の傾向が強い。
兄弟が長男から順に役職持ちになるわけでもないし、発言に力を持たせるのは能力の証明のみ。
爵位の継承順位は、発言力の序列と等しい。
継承権第一位が俺。
父上が決めたことで詳細は知らないけど、恐らく決定打はこの魔力眼だろう。
継承権二位はノアルト。
もちろん次男だからではなく、父上に証明した実力だ。
魔力は高いし攻撃魔法も防御魔法も秀でていて、文官としての能力だってエドが唸るほど高い。
継承権の序列は十歳を超えてからなので、ユリウスからはまだ決められていない。
まぁユリウスはあまり興味なさそうにしてるし、騎士になりたいようだが。
「でも姉様は、何故祖父母と話す場を求めるのですか? また嫌な思いをさせてしまうのでは」
「まぁ、アリスがアイティヴェルだから、かな。」
「さすが英雄の家門……!」
ユリウス、その納得の仕方で良いのか?
うん、まぁいいか、別に。
「ユリウス。きっと姉君は愛する兄上のために動きたいのでしょう。その気持ちを汲んで見守るのが、僕たち弟の使命なのかもしれません。」
「なるほど!」
ノアルト、使命とは?
ユリウスももう少し考えて答えないと。
祖父母にお茶に誘ったら、明後日に約束を取り付けた。
『他人に準備させるのは怖い』
そう手紙の返事に書かれていてイラッとしたけど、アリスはそれを読んでも笑っていたし、俺はその時間をアリスのためにあてようかな。
本気でアリスが何かすると思って準備を断ったのだとしたら、力尽くでも事実を理解させるが、アリスにも確定してから動くと言われているからまだ我慢だ。
アリスが恥ずかしかったのは
泣いた顔じゃないと思うな(´・ω・`)
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