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アイティヴェル辺境伯家 メイド ハンナ




 侯爵領の主都に着いた。

 さすが侯爵領、という広大さ。


「ビリー様、お嬢様の荷物は何処へ運びましょう?」


「案内させま‥‥‥‥ えっ!? ちょっとお待ち下さい!」


 会話の途中で何かに気付いて走って行かれました。 

 何かあったのでしょうか?


「どうしておふたりが、此処にいらっしゃるんですか!」


「兄上と姉君の迎えに決まってるだろう。」


 あぁ、ノアルト様ですね。

 夏にアイティヴェル領にいらしたから、ノアルト様は面識があります。


 それにしても、ユアランス侯爵家のご令息はどうして邸の外で待ってしまうのでしょうか。


「あ、ハンナが居る。久しぶりだね。」


「えっ、もしかしてアリス姉様付きのメイド?」


 アルグランデ様ともノアルト様とも容姿は似ていないけど、それでもノアルト様の隣に立てるのだから弟君なのでしょう。

 お嬢様を姉様と呼んでますし。


「俺はユリウス・ユアランス。三男なので、アル兄上の二番目の弟です! いつもアリス姉様がお世話になってます!」


「ユリウス様、その挨拶はどっちかというとアイティヴェル家に仕えるハンナのセリフです。アリス様はまだユアランスになってませんからね?」


 どこから突っ込んで良いのか、そもそも突っ込みいれて良いのか迷ってたら、ビリー様が代弁して下さいました。


 ニカッと笑うそのお姿は幼く見えますが、それでもやはりユアランスの血を感じる美少年。


「アイティヴェル辺境伯家、アリスお嬢様付きメイドのハンナと申します。お嬢様と共にお世話になります。」


「おう! よろしくな!」


 まさかの返答。

 とっても貴族らしくない愛想たっぷりの返事です。

 男性ばかりの家なのでちょっと不安もあったのだが、それは杞憂だったのかもしれない。



「アリス。足元、気を付けて。」


 お嬢様をエスコートして馬車から降りてきた人物は、このユアランス侯爵家の嫡男アルグランデ様。

 可愛らしいうちのお嬢様の隣に立っても、全く霞まない美青年です。


『アリスお嬢様、ようこそユアランス領へ。』


 使用人たちが一斉に声をあげ、礼を取りました。

 さすが侯爵家の本邸、使用人の質が高い。


「もしかして、リド、ですか?」


 お嬢様が、先頭に居た初老の執事に声をかけました。

 そういえば、昔お嬢様が皇都のユアランス邸に通っているときに、いつもお茶をいれてくれる執事が居たけどもしかして?


「はい、リドでございます。まだ幼かったお嬢様が素敵な淑女に成長なされ、今でも坊ちゃまの手を取ってくれているなんて。長生きしてみるものですな。」


 その言葉を聞いて、お嬢様の瞳からはハラハラと涙が溢れていました。


「アリス!?」


「お嬢様、私めが何か気に触ることを」


「違うの。私、ずっとユアランス領に来てみたかったの。それが叶ったんだなって実感して、嬉しくて。」


 アリスお嬢様にとってお慕いしている方の生まれ故郷。

 行ってみたいと婚約した頃に言っていたのを知っている。


 それに、此処ユアランスは自然豊かで貴重な薬草の産地でもあるらしく、お嬢様は興味があってもあの事件以降は『私が入っていいはずのない場所』とずっと諦めていました。


「アリス、泣かないで。此処にはこれから何度だって来られるし、もう数年で君のユアランス領にもなる。」


 あ、婚姻まで最速で辿り着こうとしていらっしゃるのね。

 それでも、此処は侯爵の領地であって、アリスお嬢様のユアランス領とは一体。


「ふふっ。リド、泣いたりしてごめんね。また会えて嬉しいわ。」


「光栄でございます。これでいつ天からお迎えが来ても後悔ありません。」


 ユアランス侯爵家の方って大げさな言い方をするけど、使用人も長く使えると似てくるのかしら。


「爺、それはまだ早いだろう。美しき兄上と可愛らしい姉君の子を見てみたくはないのか? 兄上に似ても姉君に似ても、さぞかし可愛い子になるぞ? そしてその子が大人になったら、とてもすごいことになる。」


 ノアルト様がハンカチを貸しながら、さらりと言いました。

 婚姻まで見届けるとかではなく、まさかの子まで一足飛び。

 なんというか、ノアルト様って兄上大好き過ぎますよね。


 そんな話をしている間、アルグランデ様がハンカチでお嬢様の涙を優しく拭ってくれています。


「初めましてアリス姉様! ユリウス・ユアランスです。」


 ノアルト様の後ろから現れたユリウス様が、ニカッと笑ってお嬢様に挨拶して下さいました。


「お初にお目にかかります、ユリウス様。アリス・アイティヴェルです。お会いできて光栄です。アディから剣術に熱心な弟君が居ると伺っております。」


「え! 兄上が俺の話を? 嬉しいなぁ!」


「こんな顔でごめんなさい。」


「え? 姉様は泣いていても美しいよ。どんな表情でも姉上は変わらず兄上の愛しい人だ。」


 照れもせずにこんなことを言えてしまうなんて、ユアランスの気質なのでしょうか。


 ユアランス領でお嬢様の心臓が持つか不安になりました。



ユリウスがもし長男なら

アディの何倍もの婚約申込が

来てたと思う。

いろんな理由で。


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