聖女 レイマリウス男爵令嬢 マリーナ
ネタバレ回です。
ここまでの話を読み終わってから
読んで頂きたいです。
教会に閉じ込められている間に、エトール伯爵領から精霊の樹蜜が発見されたと陛下主催の夜会で発表されたらしい。
どういうことなの?
それにエドワードの誕生日に、お揃いの衣装で婚約者をエスコートし仲睦まじくしていたとか。
なんで?
それは私のイベントでしょう?
この世界がゲームの中だと気付いたのは、治癒魔法の魔力暴走で村人を救ったときだった。
あぁ…… なんて残酷な世界。
私を虐め抜いていた村人を救いたくなんてなかった。
聖女になんてなりたくなかった。
このゲームは、どハマリしていた友人に『謎解き要素がクリアできない!』と泣きつかれて始めた。
友人の勧めに従った順で進めてみた。
最初に選んだのは、宰相令息のエドワード。
四大侯爵家、魔法の存在など、帝国の情報を学べる仕様なっていて、なるほどこれはこういう世界観なのかと理解した。
エトール伯爵家の悪事を暴いて、エドワードが婚約解消をした後に恋人同士になればハッピーエンド。
次に選んだのは、腹黒天使リンベルト。
甘く可愛い容姿で子悪魔のように微笑むギャップが、人気なのだとか。
このルートで明かされるのは、教会の闇の部分。
真面目なエドワードと違って遊び心のあるリンベルトのルートでは、甘いエピソードなんかもあってときめく要素多めだった。
聖女であるヒロインを救い出して、婚約という盾でヒロインを守れればハッピーエンド。
ここまでクリアして既に疑問なのは、名門貴族のエドワードが何故恋人同士でハッピーエンドなのか。
この手のゲームは、普通結婚エンドじゃないの?
リンベルトに至っては、甘い言葉を囁くスチルがあるけど、婚約までしたのに愛を名言していない。
そもそもリンベルトのルートでは教会は潰れたのに、何から守る盾が必要なの?
次に選んだのは、炎剣士レオナルド。
このルートからやたら難しい。
レオナルドは、皇太子を皇帝にすることを最重要視しているから、どの選択肢でもその要素が鍵になる。
ザックリ言えば、皇太子が皇帝になるために役に立つ存在でなければならない。
そして明かされたのは、皇族の皇帝への成り上がる難しさ。
このルートは婚約で終わる。
レオナルドが膝を付き生涯の約束をしたスチルは、とてもハッピーエンドらしく本当にドキドキした。
けど深読みすると、皇太子を皇帝にするために利益があるから、婚約に至ったのかと思ってしまう一面もある。
ここまで辿り着いて開放されたのが、皇太子ルートだ。
レオナルドで皇族の弱肉強食事情が明かされた第一皇子が皇太子ウィリアム。
このルート、何回やっても失敗する。
幽閉、幽閉、追放、友人エンド、追放。
更に、皇太子ルートから四大侯爵家の最後のひとりが『皇太子の親友』として登場した。
勧めてくれた友人が話すには、この皇太子ルートでこのゲームの人気は爆発したらしい。
全体的にビジュアルが良い作品だが、皇太子の見た目が心に刺さった女性な多いようだ。
いかにも王子様って感じの雰囲気に、麗しい見た目、優しさ。
それなのに、クリアが本当に難しい。
友人とゲーム画面を見ながら、皇太子ルートの攻略の相談をしていて気が付いた。
エドワード、リンベルト、レオナルドのハッピーエンドのスチルが微妙に違う。
背景が違うとかそういうレベルだけど、普通こんなことはありえない。
他のスチルも比べてみて気付いた、お互いに存在しないスチルがある。
友人と全てのルートをやり直した。
というか、難攻不落の皇太子ルートほんと鬼過ぎる。
けど、友人はこの皇太子の見た目に一目惚れしてるそうだ。
氷狼魔導騎士とのツーショットが特に大好きだそうで、この後のルートに現れるだろうと予想を立てて更に必死だ。
全て揃って、やっと皇太子ルートに新しい選択肢が表示された。
それをクリアしてやっとハッピーエンドだ。
エドワードの元婚約者を慈しむシーンとか、リンベルトの心を殺す訓練を受けていた過去とか、レオナルドが涙するシーンとか、本当に感動した。
けど、不思議だと思うのは、皇太子ルートだけ婚姻までたどり着いて皇太子妃になる。
全てやり直しても、エドワード、リンベルト、レオナルド、全てのルートで婚約者になっただけだったのに。
何かがおかしい。
キュンキュンしてる時間より謎を考えてる時間が長い。
これ何ゲームだっけ。
そして開放されたルートのは、氷狼魔導騎士アルグランデだ。
孤独な存在、誰より強くて儚い男、などとキャラクターたちに言われていた彼。
皇太子ルートで初めて姿を見せたときには、世の女性たちの好感度は爆上げが完了していた。
このルートを待ち望んでいたファンはかなり多い。
このルート、始めてすぐに『は?』ってなった。
だって婚約者として現れたのが、皇太子ルートでは皇太子の婚約者だったアイティヴェル辺境伯のご令嬢だ。
悪役令嬢の掛け持ちなんて人不足ですか?
そんな馬鹿な。
そして、皇太子ルートより難しい。
あっという間に、『難攻不落』『難易度SSS』などとファンから呼ばれるようになった。
幼い頃に魔力暴走で婚約者に怪我を負わせてしまい、それを気にして婚約解消を告げられないアルグランデ。
その傷を聖女であるヒロインが傷痕を消し去り、ふたりは無事に婚約を解消。
ヒロインはアルグランデと婚約。
ところが婚約になったのに、ノーマルエンドにしかならない。
結婚したとか、それとももっと濃いルートがあるとか?
ファン一同私も含めて、『本当にハッピーエンドなんてあるの?』と思い始めた頃、攻略相談サイトに『泣いた。』と画像付きで投稿がされた。
画像にあった文字は “ Truth End ” とあった。
けど、私はそのエンディングを見ることは叶わなかった。
久しぶりに学園に来たけど、気分は最悪。
あちこちでエドワードとエトールの話。
どうして上手くいかないのだろう。
バッドエンドは皇太子殿下とアルグランデしか見てないけど、処刑か追放か幽閉だった。
そして今の私には分かる。
私の目的を果たすためには、高位貴族との婚姻しかない。
そして同世代の該当者といえば、皇族か四侯令息。
「聖女さま!」
声をかけられて、本当に驚いた。
だって、アイティヴェルだったから。
それにこの女のことが本当に分からない。
何でゲームと名前が違うわけ?
「これを受け取って下さい。」
渡されたのは手紙。
何で手紙? と思って見たら、そこに書いてあったのは『どうか受け取ってください。』の日本語。
「これは貴女から?」
「違います。預かりました。」
私は空き教室でひとり隠れ、手紙の封を開けた。
ゆっくりと読んでいく。
なんで、どういうことなの?
初の聖女回でした。
長くなりましたが、一括で書きたかったので。
予想してたよ!って方も居るかもしれないですね。
書き直して思ったけど、
ネタバレであっても謎は解けていない?
まぁいずれ!
データ飛んで書き直しになったことで
この話の投稿に迷いがあり、更新が遅れてしまいました。
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