婚約者のドレス
今日はユアランスの邸でアリスとお茶してる。
エドの誕生日が近いからその相談だ。
ファンブレイブ侯爵家では、毎年必ず令息たちの誕生日パーティを開かれる。
侯爵夫人の希望で開催することは決定事項だそうで、規模だけは本人たちに任せられている。
エド曰く、腕試しだとそうです。
普通貴族のお茶会と言えば、女性主催のイメージが強い。
それなのに、お茶会でも夜会でも、どういう趣旨のパーティでも構わないらしく、今年エドはお茶会にするそうだ。
様々な経験を積ませるのが、ファンブレイブ侯爵家の教育方針らしい。
「何で今年はお茶会なんだろう? 今エトール伯爵家とファンブレイブ侯爵家は何かと話題になってるから、もっと大々的なパーティにして何かしてくるかと思った。」
「アンジェ様と過ごす時間を作るためとか?」
今のエドならありえる気がする。
こないだの陛下主催の夜会は聖女が何故か欠席で、エトール伯爵家の話題にストップをかける人が居なかった。
たからこそ、できることが今ならある。
「俺たちもお茶会の後デートする?」
「いいですね!」
着替える時間がもったいないから、そのまま散策できる貴族街に行くのも良いかも。
そんな話をしたら、アリスが最近話題になってる店があると教えてくれた。
せっかく着飾ってるから、夜やってる舞台とか見に行っても良いかも。
もしくは、貴族らしい飲食店に行くのもありかな。
当日の衣装の相談を済ませて、俺たちはデートの計画で盛りがってその日を終えた。
そして、エドの誕生日当日。
俺たちはファンブレイブ侯爵邸にやってきました。
何故か “黄色が主体の衣装” という指定が入っていたので、俺もアリスも今日は黄色で揃えている。
何故黄色なのだろうか。
会場に入って驚いた。
衣装の色が、赤、青、黄色で綺麗に別れている。
色の指定を別けて招待状を用意していたのか。
赤も青もいいな。
アリスに似合うドレスをつい想像してしまう。
ご夫人やご令嬢たちは、衣装を用意するのが難しかったとか、楽しかったとか既に盛り上がっているようだ。
「なかなか無茶振りだったのか?」
「いえ、主体という表現は少々曖昧ですし、なんとでもなるように思います。」
例えば、真紅の髪のご令嬢は赤色を指定されていたように見える。
赤みの強い髪色に赤主体のドレスというのは、とても派手になりすぎる心配があるが、彼女は髪は纏めて小ぶりな白と赤の花を飾り、ドレスはワインのような深みのある赤色がメインだ。
赤が強すぎないように全体を上品に纏めていると、アリスが丁寧に説明してくれた。
アリスは、髪を緩く編んでいて、両耳には黄色の花のピアスが目立っていて可愛い。
編んだ髪の先には同じ花の髪飾りが使われていて、とても可愛い。
ドレスは全体的に落ち着いた色味だが、スカートの布地の隙間から黄色のフリルが大きく大胆に使われていて、このフリルはアリスの可愛さを際立たせる天才だと思う。
確かにアリスのドレスは、黄色の布を主体として作られているわけではない。
「よぉ、アル。もう来てたのか」
「レオ。」
レオは赤色指定のようだ。
もちろん真っ赤なわけではなく、黒の衣装に赤い襟とラインが入っている程度。
俺が衣装を観察している間に、アリスが挨拶を交わしていた。
「指定色、少なくない?」
「俺は髪が赤なんだから、主体って意味では十分だろ。」
さすがレオ。
なんというかザックリしてるのに、なんか納得できる。
自分で想像してみたら、全身真っ黒はさすがにないな、とあっさり受け入れられた。
「アルは黄色も似合うじゃないか。明るい黄色ではなく、落ち着いた色味なのが秋らしくて良いな。アイティヴェル嬢も素敵なドレスだ。」
「有り難うございます。」
「レオ。アリスは俺の婚約者だからね。」
「? 当たり前だろ。あ、妹がアイティヴェル嬢にドレスショップの話をしたいと言っていて、どうたろうか?」
「はい、もちろん構いません。」
レオのこういうところが憎めない。
こういうとき、ウィルとエドは呆れるけど、レオだけは当然のこととして受け入れてくれる。
エドは婚約者と一緒に入場。
そして、その婚約者のドレスは緑色だった。
これに招待された貴族は様々な憶測をたて、エドの婚約は揺るがないものだと広まった。
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