派手なピアス
会場に戻ってみると、アリスの傍にはノアが居た。
「アリス、待たせてごめん。」
「アディ! お疲れ様です。」
アリスには、家の用事を済ませてくるとだけ伝えていた。
ミハエルかエトール嬢の傍に居るように言ったのだけどな。
「ノア」
「お疲れ様でした兄上。姉君の護衛をしていました。」
「姉君?」
戻ったら何故かアリスとノアが親しくなっていた。
実の兄弟の俺でさえ、何年もかけて兄君という呼び名を矯正させたから、アリスが呼び方を修正させることはほぼ不可能だろうな。
「まだ婚約者なのに姉君だなんて、図々しく思われないか心配なのですが、ノアが譲ってくれなくて」
呼び方がノアになってる。
俺が居ない間に何かあったのか?
「あの、アディ。」
「ん?」
「さっきノアがご令嬢の方に声をかけられていて、とても人気があるのだなぁって思ったのですが」
まぁ、ノアって人当たり良い印象あるし、次男ってところに魅力を感じる人もいるようだ。
ユアランスって家門は、当主にかかる重責も思いし、戦場に赴く場合もあるからね。
「アディもあのように女性に声をかけられるってことが、頻繁にあるのでしょうか?」
「えっ」
まさかそんなことを言われるとは思ってもなかった。
俺は段々顔が熱もっていくのに、アリスは周りを伺うように視線が合ってないから伝わってない。
「頻繁に、はないかな。俺は愛想もないし、この瞳だから、ノア程は‥‥ 多分」
うぅっ、アリスが妬いてくれてるって認識であってる?
本人はそのことに気付いてなさそうだけど。
「瞳って、この綺麗で甘そうな優しい瞳のことですか? 避ける要素になんてならないように思うのですが」
アリスの桃色の瞳が真っ直ぐにこっちを見て、至って真剣なのだと伝えてくれている。
「待ってアリス。これ以上は、俺」
バチンッ
「え!?」
湯気がでそうな顔面を両手で覆って隠すしかできなかった。
アイティヴェル領に着いたときのアリスの言葉を思い出して、俺は全力で深呼吸した。
「やぁ、アル、アリス嬢。今日も仲良しだね。ノアルトまで一緒なんて珍しい。」
現れたのはウィルだ。
顔を見なくても声で分かる。
「皇太子殿下にご挨拶させて頂きます‥‥」
「そういうのは顔を見せて言うものだよ。別に良いけど。」
「許してくれて有り難う親友。」
ウィルは昔から公式な挨拶とかじゃなければ、こうやって俺のすることを許して、親しくしてくれる。
俺の挨拶に続いてノアとアリスも挨拶していた。
その間にアリスのドレスの話でちょっと盛り上がってる。
参加したい‥‥ 息を吸ってはけ! 大きく!!
俺はやっと顔を上げられた。
さすが陛下主催の夜会、ウィルは完全武装だ。
皇族だから豪奢な装飾品はいつもだけど、ピアスまで大きな宝石がぶら下がっている。
「アリス。ウィルみたいな派手なピアスってどう思う?」
「? 素敵ですね。」
「ちょっと、そういう目の前で聞かないでよ。でも、褒めてくれて有り難うアリス嬢」
そうか、素敵か。
こういうの俺でも似合うかな?
「アルならもっとシャープなデザインの方が良いと思うよ。アリス嬢に相談してデザインから作ってみたら?」
言葉にしてないのに返答が返ってきた。
よくあるから今更気にしないけど。
夜会もそろそろ十分だろう。
帰りたい。
ウィルもいつもはシンプルなピアスです。
今回は皇帝陛下主催なので
宝石など派手めが多かったようです。