相談してほしい
俺とアリスは講義が終わり次第、ドレスショップに来ていた。
「此処がアルとアイティヴェル嬢行き付けのドレスショップなのか。なんというか、もっとゴテゴテした高級店を想像していた。」
エドとエトール嬢も一緒に。
「ウィルの紹介なんだよ。それに、派手すぎたり露出が酷かったりすることのない上品なデザインが多くて、丁寧な仕事ぶりがとても俺的に好評だ。」
俺たちは店主に相談し、デザインから間に合わせるのは無理ということなので策を考えた。
ご令嬢なら袖を通していないドレスの予備があり、それを着てくるパターンが多いのではないか、と店主は言っていた。
しかし、古い型だったりすることもあるから、流行に沿ったデザインで用意できる家はそう多くないとも話してくれた。
アリスなら予備があるかもしれないけど、今回は主役のエトール家を気遣いたいところだろう。
「そこでっ、こういうのはどうでしょう!」
店主が用意したのは、シンプルなドレスで、刺繍もレースも宝石もない。
上質な生地の簡素ドレスってところか?
「此処から好きなものを足していくのです!」
「まぁ素敵!」
アリス、反応が早い。
既にイメージがあるのだろうか。
「今回は時間がないとのことなので刺繍とかは間に合わないかもしれませんが、既存のレースや宝石などを飾っていけばオシャレかつ個性のあるものになるかと!」
「わ、私にできるかしら?」
目を輝かせたアリスに対して、エトール嬢は少し不安そうだ。
「アイティヴェル嬢。こういう場合は何が必要かご指導頂けないだろうか。」
驚いた。
エドが婚約者のためにアリスに願い事をするなんて。
「そうですね‥‥まずは優秀な針子を。それから使っていないドレスなども良いかと。あとは、再利用できそうな髪飾りとか宝飾品とかも良いかもしれません。」
あー、なるほど。
エトール嬢が不安になったのも分かる気がする。
エトール邸は使用人を一新したと聞いてるから、優秀な針子なんて仕えて居ないかもしれないし、虐待されてたくらいだから使ってないドレスなんて持ってないかもしれない。
「アンジェ、心配しなくて良い。母も姉も居る。皆アンジェのことを気に入っているし、喜んで差し出すだろう。」
「そんな! 私などのために」
「アンジェ様、このお店には素敵なレースとかもあるようなので買って行きませんか? お揃いも良いですが、下地のドレスが一緒なのですから敢えて個性を出すのも良いかもしれないですね。」
うぅ、可愛い!!
アリスがとってもニコニコして楽しそうだ。
「アル、そのキラキラした顔はマズイからしまえ。」
「顔をしまうって何。」
「アンジェ、好きな素材を買っていこう。結果的に使わなくても構わないから。」
え、無視?
エドは俺を完全に無視して、レースや生地を見ているアリスたちの所に向かっていく。
まぁ俺も行くけど。
「アリス、こういうのもどう?」
「それも素敵ですね!」
アリスの笑顔が可愛くて眩しい。
これとかお揃いの小物にしても、などと話が盛り上がる。
それを横で驚いた顔で見ていたのはエドだ。
「アル、違いが分かるのか?」
「勉強したからな。」
「勉強?」
「アリスのドレスを任せてもらえたりもするから、常に流行と似合いそうな物とアリスの好みには気を配って店主を師事している。」
お揃いの色とかお揃いのデザインというだけでなく、そもそもドレス作りから俺が関わっているとは知らなかったようだ。
驚くのは良いけど、ため息はやめてよね。
「アイティヴェル嬢、アルのやりすぎがしんどくなったら、限界がくる前に相談してほしい。」
「私は全く大丈夫ですよ。」
アリスがそう言うので俺は嬉しい。
そしてエド、もうちょっとオブラートに包んで。
それから俺たち四人は、必要そうな物をいろいろ買って店をでた。
誤字報告有り難うございました。
婚約者のドレスを
デザインから細かく指示して作るのは
帝国では普通ではない。