【閑話2】アディからの手紙
『拝啓、我が愛しの婚約者殿。』
アディから手紙のお返事をもらったのですが、まさかの冒頭にすでに顔が真っ赤になっていることでしょう。
帰宅してから開けて良かった。
『手紙をくれたこと、本当に嬉しかった。俺はいつでも歓迎します。アリスの負担にならないときに、いつでも書いてほしいな。』
負担にならないときに、か。
アディって、自分はこれしてくれたら嬉しいってきちんと伝えてくれるけど、必ず私の負担を考えてくれるのよね。
『それから、アイティヴェル家の夫婦の話、素敵だと思ったよ。俺たちもそういう夫婦になれたらな良いな。』
ボンッ。
夫婦に………
それはもちろん、婚約者なのでいずれはなるのですけど、改めて言われると本当に照れます。
アディもこんな気持ちだったのかしら?
お祖母様が「好きとか愛してるとか、行動で分かってもらえるなんて甘えだわ。言葉にしないと!」と言っていたけど、言葉にするって心臓が辛いわ。
『今まで、俺の愛は重い自覚があったから、気持ちの全てを伝えられずにいたし、嫉妬心を正直に伝えることもできなかった。』
嫉妬心?
『アリスの気持ちを疑ったことはないけど、それでも他の男がアリスの隣に居て “お似合い” だとか “美男美女” とか言われてるとどうしても妬いてしまいます。』
そんなことあったかしら?
というか、他人を美男って言うけど、アディは自分が美しい自覚が無いのかしら?
例えば殿下は、自分の魅力を解って振る舞っているような気がするけど、親友なのにアディは全く違うのね。
思い返してみれば、五年の間に聞いた噂通り、アディは人前で愛想笑いひとつしないわ。
『アリスの好きなところを書き始めると、何日もかかってしまうので厳選しました。』
厳選??
脳内選考会でも開いたのかしら?
確かにどこをって伝えるの私も悩んだわ。
『アリス、君を愛しているよ。心から。』
厳選ってこういう!?
有り難うって平気で笑顔を作るなんて、まだ無理よ。
顔から火が出そうに熱い。
『五年の時を経て再会したアリスは、とても綺麗で、変わらず可愛くて、そして優しい心根のままだった。』
そんな風に思っていたの?
貴方に会いに行くこともできない弱い心の私を、貴方の気持ちを疑って聖女様と恋を育んでいると誤解していた駄目な私を、今でもこんなに想ってくれているなんて。
『口下手でごめん。』
本当に口下手な人は、手紙で愛を伝えられないと思うわ。
『アリスだけのアディより』
もう!
どうしてこの方はこうも甘いのか。
嫉妬心かぁ。
アディ、ハッキリ言葉にすることは確かに稀かもしれないけど、思いっきり顔と態度にでていましたよ。
殿下なんて、招集前に私の傷の話になるかもと承諾の返事を下さいましたが、「アルが妬くから返事は不要。」と言ってきたくらいですからね。
ちなみに、返事をしない代わりに諾なら差し入れを、否なら差し入れは無しというふうに指示されていました。
アディは事前に許可という話が出たときもムッとしていましたし、さすが親友だけあって殿下の言う通りでしたね。
というか、私だって嫉妬くらいします。
子どもの頃のアディは、魔力が不安定で瞳がいつもキラキラ光って揺れていて、内気で可愛くて。
それなのに再会したら背も伸びて、騎士らしい体格になっていて、今では女性に騒がれる存在です。
本人は気付いてなさそうですが、アディを見て顔を赤らめる女性はとても多いです。
素っ気ない態度のアディにあれだけキャーキャーできるのですから、もし笑いかけでもされたら倒れそうな方もいましたね。
どうしてこんなに格好良くなったのか。
アディと殿下おふたりが並ぶ絵姿が、影で高額取引されているなんて話も聞いたことあるくらいです。
本人の許可、絶対取ってませんよね?
貴方が好きです。
魔力眼持ちということで隣国を牽制する役割を果たし続け、侯爵家嫡男として “氷狼の魔法剣士” の名を馳せ、貴族からも民からも一目置かれている存在。
学園には首席で入学。
特級魔導師に最年少合格して、皇太子殿下の側近。
侯爵家の嫡男で、昨年の魔物討伐で実績もある。
そしてとんでもなく美青年。
優しくて温かくて、ちょっと不器用でも誠実な貴方が、私はとても大切です。
私の傷を見る日が来ても、例えば私に言えていないことがあっても、貴方は私を大切に想い続けてくれるでしょうか。
貴方の隣に立てる人になりたいです。
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