語ることができなかった
本日2回目の更新です。
前の話読んでないと普通にネタバレです。
「私たちばかり質問して悪かったね。良かったら何でも質問してほしい。」
ウィルがそう切り出した。
ご令嬢に一方的に質問ばかりするなんて、紳士としては絶対ダメだよね。
「あの、聖女様は、どうして調査対象になられたのでしょうか?」
エトール嬢が最初に切り出した。
「では、まずはその質問に答えようと思うけど、アリス嬢もそれで良いかな?」
了承の返事をしたのを確認して、ウィル自ら落ち着いて丁寧に話を進めた。
治癒魔法で報酬をもらっているという話。
その他の様々な不審な言動や、国家機密を知っているような素振りなど。
それから、アイティヴェル家、ユアランス家とのことも。
「アンジェ」
涙が止まらない様子のエトール嬢に、エドがハンカチをそっと渡していた。
「だって、五年前にアリス様の治癒を拒否していたなんて。アリス様は、優しくて可愛くて美しくて聡明で慈愛に満ちていて大変素晴らしい方なのに、あの女は神託などと曖昧な理由で!」
「エトール嬢、君はアリスのことを本当によく分かっているようだ。さすがアリスの親友だな。」
「アル、少し黙ってようか。」
エトール嬢が知らなかったのは仕方ない。
怪我したのはアイティヴェルの姫君、怪我を負わせたのは婚約者で魔眼の持ちユアランス侯爵家子息、そして登場人物として治癒魔法を拒否した聖女、社交界に現れなくなった英雄まで登場する。
社交界では誰も語ることができなかった内容だ。
「アンジェ様、私は大丈夫です。命に別状はありませんでしたし、婚約も継続しているので嫁ぎ先に困ることはなく、悩みは無い方だと思います。今日話すことも、事前に殿下から聞いていましたので。」
「え、俺は聞いてないんだけど。俺が居ない所でアリスと話したの? ウィル?」
「そりゃ事前に許可は必要でしょう。」
「ご配慮有り難うございます。ですが、此処に居るのは事件のことを知っている高位貴族の方々と、私の親友ですから、私にとっては問題ありません。」
エトール嬢がまたボロボロと涙を落とした。
それを見てアリスが優しく微笑んだけど、目があってまた泣いている。
隣のエドが甲斐甲斐しい。
「それにしても、これだけ年数をかけて調べているのに、決定打がないなんて聖女は意外と賢いのかな。この僕が調べてるのに。」
リンはため息をついた。
そう、疑惑や醜聞では話にならない。
教会ごと倒せる勢いのある物証でないと、聖女を罰することはできない。
教会を腐敗させたことで、国の治癒魔法保持者がごっそり居なくなっては困る。
「どうなんだろうね。でも、ユアランス侯爵令息襲撃事件とか、ファンブレイブ侯爵令息婚約者の監禁事件とか、そういうものに関係している可能性がある以上は放っておくわけにもいかないよね。」
「ん? あれ?」
リンが思わず声に出したけど、俺も思った。
おかしくない?
「五年前のことは、アルのこと好きな女って思ってたけど、聖女ってアルからエドに乗り変えたのか? いや、そもそも恋心が疑うべきなんだっけか?」
レオの言う通りだ。
「ここまでにしよう。一度落ち着いて考えたい。」
ウィルの一言に、皆が賛同してこの場はお開きになった。
聖女が何なのか何がしたいのか
分かったような分からないような
気持ちでいてもらって大丈夫です。
全て分かったよ!という方、
帝国皇太子ウィリアムの先をいくなんて
何者なんでしょうか。(適当)