会議
お茶会という名の、作戦会議が始まった。
「アリス嬢。あのとき、聖女はエドを本当に好きなのかって言ってたけど、どうしてそう思ったのか教えてくれる?」
エドにエスコートして欲しかったというのだから、当然エドのことが好きなのかと思っていた。
「公衆の面前で、エスコートして欲しかった、連れてる女性ではなく私の方が、などいう発言に違和感がありました。」
「違和感?」
「あんなことをして、ファンブレイブ様に好かれるとは思えません。例え他の男性であってもそうですが、ファンブレイブ侯爵家は宰相一家であり、礼節にとても厳しいことは有名です。公衆の面前で騒ぎを起こす令嬢を家門に迎えるとは思えません。」
「言われてみれば‥‥ ただ常識がないのかと思っていた。」
レオ、直球だ。
まぁ俺たちもそう思っていたけど。
「聖女様は、発言と行動に不思議な点が多いですが、何度か拝見した淑女としてのマナーはきちんとしたものでした。淑女教育を受けていないとはとても思えません。」
「わざとあの無礼な態度を?」
アリスは真剣な瞳をウィルから視線を外すことなく、肯定の返事をした。
ちょっと妬ける。
しかし、これには少し頭を抱えるな。
聖女は以前から俺たちに露骨に媚を売っていたし、いつも冷静なウィルでさえ恋心がオカシイ原因だと思っていた。
俺たち揃って、きちんと淑女の挨拶をされた記憶すらないくらいだから、かなりのものだと思う。
聖女の生まれは、国の西部地域にある村だ。
そこが魔物の氾濫で壊滅し、生き残った聖女は覚醒したかのように大規模な治癒魔法を使って重症の村人たちを救った。
その功績が認められて、“聖女”として教会から認められた。
元々孤児院で生活していたらしく、男爵家が養父として引き取ることになった。
この話をエドがふたりに話した。
聖女は孤児院出身という過去を話そうとしないから、ただ “魔物の氾濫で傷ついた民を癒やした功績” と広まっているから知らなかったようだ。
「あの、聖女様はどうして生き残ることができたのでしょうか? 攻撃魔法や防御魔法をお持ちなのですか?」
「いや、聖女は枯れ井戸の中に居たからだ。誰かが守ろうとしたらしく蓋が殆ど閉まっていて、それで見つからなかったらしい。」
これを聞いた瞬間、アリスの瞳が揺れた。
そして、その様子を空色の瞳は絶対に見逃さない。
「……ご令嬢方には重い話だったよね。配慮不足で申し訳ない。ちょっと休憩しようか。」
「いえ、大丈夫です。」
「わ、私も大丈夫です。申し訳ありません。」
謝る必要はないよ、とウィルが答えたが、レオが席を立ってポットからお茶のおかわりを用意し始めた。
「アグニエイト様! そのようなことは私が!」
エトール嬢が席を立ってすぐに申し出たが、お茶くらい誰がやっても良いのでは?
「エトール嬢、君はエドが決めた未来の侯爵夫人なのだから、俺に気を遣う必要はないよ。俺のことは兄のように思ってほしい。此処は私的なお茶会だしね。」
「あ、兄にもお茶のおかわりなんて‥‥いや、リュカお兄様になら頼めるかも? あれ??」
エトール嬢が混乱している。
レオがお茶菓子までお土産に持ってきていたようで、あっという間にお茶会のようになった。
風邪引きました。
咳しすぎて軟弱な気管支と肺が痛みます。