昭和58年1月……某県で某所にて、お菓子隠されて怒る11歳の娘『瑠々子』と、その姿を見て喜ぶ父の親子喧嘩勃発
これは『なろうラジオ大賞3』応募用の作品です。
ジャンルは『ヒューマンドラマ』に、しています。
時は昭和58年1月……本土で一番大きいと言われる県の、ある田舎町において、3軒両隣にまで鳴り響く怒声が発せられた。
「こぉの、アホ親父いいぃぃ!!」
怒声の主は、ごく普通の平屋建てに住む11歳の娘『瑠々子』。言うまでもなく、この家が咆哮の発生源である。
「お姉ちゃん、どうしたの!?」
「瑠々子、何があったの?」
それまで、炬燵に入ってみかんを食べていた双子の妹『美姫子』とその母親は、瑠々子のすごい剣幕に驚きながらも、耳を傾ける。
「そこのアホ親父が、俺がせっかくお年玉崩して買った高級お菓子(300円)を……隠しやがった!!」
「ええ!?」
「また!?」
その言葉に再度驚き、瑠々子の対面で胡座をかいている父に目をやる、母と美姫子。
だが、当の本人はニヤニヤ笑いながら、酒をかっ食らう。
「ありゃぁ? 何処行ったかな? もしかしたら、瑠々子の事が嫌いで、足生やして逃げたんじゃねえか?」
「ふざけんなよ、糞親父……いつも何時もよぉ……」
父のあまりの言葉に、胸元で血が滲み出そうな程に両手を握りしめる瑠々子。正に、一触即発の状態。
「落ち着いて、お姉ちゃん! こんなのほっときなよ!!」
「あなたもあなたよ! 隠したお菓子、早く出したらどうなんです!?」
「だからオレぁ知らねぇよ。 元のお店に帰ったんじゃねぇの?」
父は、酒を流し込みながらそうほざくと、炬燵を出て自分の部屋へ向った。その後ろ姿を見て、強く歯軋りする瑠々子。
「大丈夫? お姉ちゃん……?」
「お母さんがまた買ってあげるから……ね?」
「もういいよ! 別に死ぬほど食べたい訳じゃ無かったし!!」
瑠々子はそう言ってふたりに背中を見せると、扉を強く閉めながら、自室に入って行った。
2時間後……。
水を飲もうと台所に移動した瑠々子は、そこで行方不明になった高級お菓子をたまたま発見する。
「くそ、親父め……こんな所に隠しやがって……」
悪態をつきながら、高級お菓子を手にする瑠々子。すると、背後からこんな声が聞こえてきた。
「そんなにお菓子が食いたいのか? お前は本当に、意地汚くて、可哀想な奴だな……」
それは、父のものだった。瑠々子は、父の心無い言葉に振り向く事も出来ずに涙する……。
……だが、次の瞬間……
父は口から泡を吹きながら床に倒れた。何が起きたのか解らず、後ろを振り向く瑠々子。
するとそこには、鬼の形相で手刀の構えをした瑠々子の母が立っていた。
「あなた!! いいかげんにしなさい!!」
……おしまい。
作中に出てきた瑠々子は『俺っ娘』です。