09.付き合いはご勘弁を
「永崎さん、お願い!」
目の前で浅井さんがお願い!ポ-ズで立っている。
「いえ、あの…私そういうのに興味なくて」
必死に断りを入れる。
「私を助けると思って!」
助けられることなら助けて差し上げたいけど、こればっかりは無理なんです。
諦めて欲しいんです。
「小西さんは?」
「彼氏いるからムリ」
「小山田さんは?」
「新婚さんでしょ」
「葉山さんは?」
「合コンメンバ-よ」
「あ、ゆ…」
「湯波さんは冴島さん一筋だから行かないって」
食い気味にあげる人あげる人について論破(?)された。
湯波さんに至っては一文字しか言ってない。
「ってこ・と・で☆永崎さんに決定なのよ」
「え、困ります」
「彼氏いないんでしょ?ならいいじゃない」
にっこにこ笑ってるのにどこか怖い浅井さん。
「はい、決定ね!時間と場所は後で教えるね。あ、葉山さ~んメンバー決まったよ~。永崎さん追加で」
「あ、ま、わ…」
″浅井さん、待って、私行きません″と言いたかったのに、圧に負けてしまった。
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「浅井菜々です」
「葉山千尋です」
「な、永崎…紗英です」
き、来てしまった。
生身の男性とこういうことしたことなくて、雰囲気に馴染めず、正直なところ早く帰りたい。
「紗英ちゃんは、特技とか趣味って何?」
″紗英ちゃん″?
こういう男性は苦手です。
「え-と?読書です」
やたらベタベタするし、好みじゃない。
早く終わらないかな…。
「あ、明日も早いのでそろそろ帰りますね」
「「え~?」」
ハモる浅井さんと葉山さん。
男性陣も同調する。
「真っ面目~」
「本当にすみません、お金置いておきます」
好機と思いそそくさと店を出る。
「紗英ちゃん!」
店を出てすぐに合コン相手の一人に呼び止められる。
「あのさ、紗英ちゃんの家で二人で二次会しない?」
意味不明な提案に寒気がしてくる。
いやいやいや、初対面。
そんな人と二人きりとか、況してや自宅でとか怖すぎる。
「無理です、やめてください」
怖くて怖くて、タクシ-乗り場まで全速力で走って逃げ帰る。
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「サエ殿?遅かった…」
「っ、ふ…」
自宅に着きジェイド様の顔を見たら、涙が止まらなくなってしまった。
「どうした?」
「あ、んしんしたら…急に涙が…」
ふわりと良い香りに包まれる。
ジェイド様に抱き締められていると気付いた。
気付いたら涙が余計に止まらなくなる。
「何があったかわからないが、泣き止むまでこうしていよう」
ジェイド様の優しさに甘える。
よしよしと頭を撫でられる手が心地良い。
「眠ってしまったか…」
ジェイド様の声。
その途端にふわふわ浮かぶような感覚。
それが終わると額に何か触れたような気がした。
ベタですみません。