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08.聞きたいけれど聞かない


唇を重ねてから、まともに推しの顔が見れなくなりました…。

どうしたら正解ですか?

わかりません…喪女にはハードルが高いです。


「おはよう、サエ殿」

推しことジェイド様の笑顔は眩しいです。

「お、おはよう…ございます」

どうしても昨夜のことが頭から離れない。

恐らく顔は真っ赤だと思う。

は-…落ち着け私。

「今日もありがとう、ございます」

用意された朝食を前にお礼を述べる。

でないと間が持たない。


『………キスしても落ちない口紅』


テレビから不意に聞こえた宣伝文句。

「ぐふっ!」

反射的に口付けた珈琲が気管支に入り込み盛大に咳き込む。

昨日に続き、2日目だ。

ジェイド様の前で恥ずかしい。

「サエ殿!大丈夫か?」

彼の伸ばし掛けた手は宙で行き場を失う。

あ、そうなんだ…ジェイド様も昨日のこと気にしてたんだ。

私だけじゃなかった。


「大丈夫ですよ」


行き場を失った彼の手を取り、微笑む。

「サエ殿…」

「昨日のこと、聞きたい気もします。けど、知るのが怖いので…聞く勇気が持てたら伺っても良いですか?あと、気まずいままは嫌なんです。折角一緒に住んでいるのに…悲しいです。だから、だから…」

「あぁ、気にするな…とは言えないが、前のように振る舞おう」

握り返される手が心地良い。

「はい、約束ですよ」

手を取り合い、私達は微笑み合った。




*******************




「何かご機嫌だね」

同期の浅井さんから話し掛けられる。

「え?そ、そうですか?」

「うん、今にも鼻歌を歌い出しそう」

そう言われぎくりとする。

「彼氏でも出来た?」

ボンッと効果音が出そうな位真っ赤になったと思う。

ジェイド様のことを思い出し、更には昨夜のこともしっかり思い出したのだから。

「そ、そんな彼氏だなんて」

両手をぶんぶん振り否定する。

推しは推し、しっかりしなきゃ。

「ふ~ん、ま…大して良いアドバイスは出来ないけど、何かあったら相談してね」

「はい、ありがとうございます」

そんなに顔に出てたんだ…気をつけなきゃ。

火照る頬を押さえ、自分の席に戻る浅井さんを見送る。

平常心、平常心。




******************


「おかえり」

私が声を掛ける前にジェイド様から声が掛かる。

「ただいま戻りました」

お互いに微笑む。

「さぁ、ご飯にしよう。着替えておいで」

「はい」

ジェイド様に促され部屋着に着替える。

「さ、どうぞ?」

エスコートされ、自分の指定席に座る。

向かいに座るジェイド様。

もう見慣れた光景。


「「いただきます」」


用意された食事をしながら、たわいない話をする。


この優しい空気が好き。

ジェイド様が好き。


ゲームをしてたときから。

ううん、そのときよりももっと好き。


ずっとこの幸せが続きますように。

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