02.推しに捧げる心臓
私、永崎紗英は動揺していた。
それもそのはず!
目の前に″揺られる心は揺り動く心のままに″の推しがいるのだから。
推しこと、ジェイク・ファーメル・クラウディアは、銀髪に碧の瞳、甘いマスクでヒロインを守る騎士ーナイトー。
ヒロインの公式な相手となる王子と双璧をなす人気なキャラだった。
「ど、どうしたら…」
①そのまま
②つつく
③匂いを嗅ぐ
①はどうだろう?正解?②・③はダメでしょ、乙女としては。
浮かび上がった選択しに頭を振る。
④として、何か掛けてあげるにした。
改めて目の前にいる人物に目を向けたが、視界にゲーム機が入り何となく片付けた。
「気付かれたく、ないな…」
クローゼットの中に公式グッズ等もまとめて仕舞い込む。
そして改めてジェイク・ファ-メル・クラウディア様を見詰める。
さらさらな銀の髪は煌めいて、閉じられた瞳はきっと吸い込まれるような碧い色をしているんだろう。
私は体育座りをし、膝を抱え込みずっとジェイク様を見つめていた。
「………、………い、………すまない」
「え!?」
声と自分を揺らす振動で目覚めた私。
「すまない、ここはどこだろうか?君は一体…」
突然視界に銀髪の碧い瞳が写り飛び退く。
「ぁ………」
肩を揺らしていたであろうジェイク様の手が肩を空を切る。
そして気まずそうな顔の彼。
「あ-…その、突然触ってしまって気分を害しただろうか?」
「いえ…」
真面に彼を見ることができない自分の顔はきっと真っ赤になっている、そう自覚していた。
「ここは私の家です。私は紗英。永崎紗英と申します」
「サエ殿か、突然お邪魔したな」
いきなり帰ろうとするジェイク様。
彼の装いで外はマズイ!
慌ててジェイク様のマントを掴む。
「私は帰らなければ…」
「帰る術が今はないんです!見つかるまで、ここにいてください」
「お見受けするに、家の中はサエ殿だけであろう?ここに留まるのは…」
「いえ、大丈夫です!ですから、外には出ないでください。お願いします、お願い…」
何故か涙が出そうになる。
マントを握る手が震えて仕方がない。
「それでは、お言葉に甘えて今夜はお邪魔させてもらおう」
私の手を取り、視線を合わせてそう言うジェイド様。
「差し支えなければ、サエ殿が知りうる情報も教えていただけると助かる」
ジェイド様の甘い微笑み。
……………推しの微笑みはこの上なく危険なものだと思い知りました。
私、永崎紗英は推しにいくつ心臓を捧げたら良いのでしょうか?
誰か教えて~。