01.来訪者は光と共に
「はぁ~、素敵だなぁ」
私はやり終えたばかりのゲーム画面にうっとりしながら、スチルを眺めていた。
【そなたが何者であろうと、余の気持ちは変わらない。
いつまでも傍にいて欲しい。
愛してる…】
そう台詞が書かれ、見つめ合うヒロインと攻略対象。
私、永崎紗英はただのしがないOL。
乙女ゲームと言われるものに癒しを求め、日々を生きてきた。
きらきらと輝く画面をぼんやり眺め、セーブをして、ゲームを終わらせた。
「明日も早いからなぁ、寝ないと」
ごそごそゲームを片付け、部屋の灯りを消す。
ベッドにゆっくりと入り眠りについた。
ちかちか淡く光るゲーム機に気づかずに。
pipipi…
規則的に鳴る目覚まし。
「ぅ~ん、あと5分…」
身体はまだ眠いと訴えるが、意識がそれを良しとはせず、頭がはっきりとしてきた。
「ん~」
固い身体を伸ばして起こす。
今日もいつも通りの日常。
歯磨き、朝食代わりに栄養剤を飲み、スーツに着替え、家を出る。
満員電車に揺られ、会社を目指す。
そんな紗英の元に一通のメッセージが届いた。
【サッキーさん、乙女ゲーの″ゆらゆり″の新作情報見ました?】
サッキーは紗英のSNSの名前だった。
乙女ゲーム″揺られる心は揺り動く心のままに″通称″ゆらゆり″の話がしたいが為だけに作ったのだ。
メッセージの送信相手は乙女ゲー仲間の″きらりん″。
【新作情報ですか?初耳です】
【ですよね?先程公式が意味深なイラストを掲載してて、動揺してます(>_<)】
紗英はどきりとして、公式のSNSをチェックする。
今までのキャラクターとはかけ離れたシルエットのみの立ち絵。
謳い文句はー輪廻転生ー…。
まだ詳細はわからないけれど、推しがいなくなる…?
気が遠くなりかけたけれど、平静を装い、【まだイラストだけですよね?続報を待ちましょう!】ときらりんさんへ返事をした。
その日は1日中気が漫ろで、仕事が手につかなかった。
「あ~もう、何してるんだろう…私」
自己嫌悪になりつつ、癒しを求めてゲームを始める。
テレビ画面に″揺られる心は揺り動く心のままに″と表示が出る。
いつも通りスタートボタンを押したはずだったのに。
パァァァと光始め、眩しさに私は強く目を閉じた。
「何だったの?」
光は収まり、周りを見渡す。
テレビの前に人が倒れていた。
「え?」
その人物に固まってしまう。
だって、その人は私の推し″揺られる心は揺り動く心のままに″の攻略対象のひとり、ジェイク・ファーメル・クラウディア…その人だったのだから。