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旅路の途中で

 ディザートタウンへの道程の途中。俺は砂漠に差し掛かった頃、数機の残骸を見つけた。


 前にもいくつか見たが……LBが破壊とはどういう事だ。ホントに意味が分からない、運悪く艦砲射撃の直撃でも食らったのか?


 バラバラに吹きとんではいるが、間違いなくLBの残骸。4脚型と、浮遊タンクのようだ。


 そう判断したのは、独特な臭いから。


 マシンと言う物には、金属やプラスチック、ガラスや塗料と多種多様な材料が使われる。それは自動車から戦艦まで、何にでも言える事だ。


 金属やガラスは熱で溶かして成形し、塗料は溶剤で溶かして使う。そしてプラスチックは熱や溶剤と様々な方法を用いる。


 LBのナノマシンは、それらを全てを用いて修復を試みる。その際、熱可塑性素材の場合は臭いは発生しないが、有機溶剤の独特な臭いが発生するのだ。


 今この場には、その独特な臭いが少し漂っている。つまりこの残骸は、データを元に修復をしている途中という事。まさしくLB、という事だ。


 どうやら太陽エンジンまで破壊されているようだが、ナノマシンは太陽光や地熱を利用してエネルギーを収集して活動している。まったく、恐ろしい生命力だよ。


「ソニックブーム、機体の識別出来るか?」


 最初は抵抗があったが、機体のAIと喋るのにも慣れてきた。こうして喋ってみると案外可愛いもんだ。


「周囲の残骸を含めスキャン中……データベースと照合……機体識別、レスティブホースとゴースルーと推測します」

「あー、確か聞いた事あるな。ここらで伐採とかしてたんだっけ?」

「ゴースルーのパイロットデータを開示。ディザートタウン周辺にて数年に渡り違法伐採を行い、討伐に来たディザートタウン正規軍にも打撃を与えました。ディザートタウンからは賞金も掛けられています。

 レスティブホースのパイロットデータを開示。ディザートタウン周辺にて盗賊行為を行い、フィエスタローズの手によって一度逮捕に至りました。その後脱獄、盗賊行為を再開しました。ディザートタウンからは賞金も掛けられています」


 まぁ、今となっては賞金を掛けたディザートタウンも賞金を掛けられた二人も居ないが。


「……お?」


 砂の中に、何やらキラリと輝く物を見つけた。


 掘り返してみると、それは強化ガラス製の写真立てだった。高熱と衝撃で溶け、歪んでいる。


 相当大事にしていたのだろう。強固な加工のおかげか中の写真は無事だ。


 一人の少女と、その子の肩に優しく手を添える青年。その背景には、LBやLM、戦車等の軍事兵器が鎮座している。


 彼氏彼女というよりは兄弟。妹想いの好青年、といった感じだろう。どちらかのLBを駆り、盗賊行為や伐採で稼いだ金や物資で暮らしていたようだ。


 しかし何故、こんな穏やかな青年がディザートタウンから目の敵にされるような事をしていたのだろうか。普通にしていればそれなりの暮らしが出来た筈だ。


 ……そういえば、思い出した事がある。ディザートタウンは過酷な砂漠の町、普通に暮らせる人間は限られていたのだった。


 というのも、砂漠では水や食糧が手に入りにくく高価。それに加えて、貧民は最低クラスの仕事にしか就けないから過酷な生活を強いられる。だからディザートタウンに從わない方が、良い暮らしが出来たりもしてしまうのだ。


 妹の為に巨大な勢力を敵に回す。きっと、英雄のような兄だっただろうな。その分、とてつもない負担だっただろうが。


 もう一人も同様だ。そんな無茶をしてまでも勢力を敵に回すという事は、それなりの目的と覚悟を持ってやったのだろう。相当頼りにされていたはずだ。


 この二人はピース・シティに加勢し、連合軍と戦って散ったのだろうか。


 だとすれば、ヴラドに共感して動いた人間達になる。全てを壊して平等な世界を作る、やはり共感する者も居たようだ。


 自分の利益ではなく世界全体の平等を求める辺り、心の底は良い奴らだったのかも知れない。亡くすには惜しい奴ら、だな。


「来世は、平等な世界に生まれるといいな」


 俺らしくないセリフが出てしまった。良い奴こそ不幸に遭う、その世界の理が理不尽だと思ってしまったのだ。


 ……あー、なんか嫌な気分になってきた。


 こういう時は前向きに行こう。そう、あいつらは良い奴、そしめ今まで散々な目に遭ってきた俺は良い奴って事だ。それでいいじゃないか。


 さて、他人の墓参りは終わりだ。ディザートタウンに向かうとしよう。


 

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