第6話 隣国の王バラック
両軍の衝突を停止させて半日後、私は隣国の王バラックの前に立っていた。
バラックは、こちらの国の王とは違う。冷酷な雰囲気を守っていて、見ている人に自然と「こいつには敵わない」と思わせる、王者の風格のようなものがそなわっていた。
殺される方法はどんなものになるのか分からないが、できるだけ苦しまない方法にしてもらえると助かる。
けれど、その王バラックは渋い顔をして私を見ていた。
「してやられたな。貴様は、自分がした事を理解しているのか?」
「はい?」
その言葉が理解できずに、私はぽかんとしてしまった。
苦々しい表情でいるバラックは自らの目論見を説明していく。
彼が言うには、ここ最近の王都は権力を振りかざした非道な犯罪が増えていて、腐りきっていたらしい。
だからバラックは機が熟したと判断して、私達の国を占領し、善政を敷くことですばやく我が物にしようと考えていたようだ。
当然戦争に勝ったのだからある程度搾取はするが、締め付け行為は前よりマシだと思わせる程度にして、国民の反抗を抑えようとしていたようだ。
しかし、私が姿を出して、あちこちに指示を出したせいで、目論見が崩壊。
この状態で、国を占領し、私を処刑してしまったら、反発が大きくなってしまう、と。
「でしたら、えっとつまり?」
「お前を仮初の王とする。統治するのは勝者の我等だが、生かしておいてやろう」
という事らしい。
ある意味私は幸運だったのだ。
現実的な考えを持っていた敵だったからこそ、救われたともいえよう。
現実的な考えを持つ隣国の王バラックは、逆らう者には容赦しなかった。
だから、占領された国は、一度は荒れてしまった。
けれど、その混乱は、すぐに収まっていった。
お飾りの王となった私は、体をはって国を守った英雄としてたたえられる事になった。
死んだ国民もいるし、ザックス達も危険な目にあったため、手放しでは喜べないし、戦をふっかけたバラックは許せないが。
思ったより被害が少なくすんだのは何よりだった。