表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/46

五話 殺しの対象



 大国、アルクド王国。人や物資の数は他国より一回りは多い、文字通りの大国だ。文明の発達したこの国は他国との交流も盛んで、人の出入りも多い。俺の知る限りでも、確かにこの国の賑わいは他国とは全然違う。


 ……このアルクド王国は、今アルクド王国女王が国を納めている。国を納めるといえば国王のイメージだが、それには理由がある。


 ……女王には、現在王位継承権を持つ、六人もの子供がいる。つまりは王女だ。それが、第一王女から第六王女までの、六人の継承者たち。国のトップ、つまり女王になれるのは一人しかいない。


 本来、国を背負う役目を担うなど、長男が負うべき役目……いや、十字架と言った方がいいか。しかし、現在の国王と女王には、跡継ぎとなる男が生まれなかった。生まれてくるのは、次々と女ばかり。


 そしてとうとう、国王が病に伏せた。彼はまだ死んではいないが、次の王位を継承すべき人物を指定する前に植物状態となった。発展したこの国の『魔法』でも治せない難病。


 生まれた順で決めるわけにもいかない。六人全員が女……よって、女王は六人の姉妹に命じた。次の王位継承権を六人平等に与える。各々がそれぞれのやり方で、国民の支持を集めろ……と。



「なるほど、詳細に載っている」



 資料に目を通し、現状を把握。俺が知っていたのは、せいぜいが六人姉妹の王女がいる、ということくらいだ。国の情勢にはあまり興味もないし、仕事でここを離れることも多かったからな。


 この資料の正確さを疑ってはいない。渡される資料に書いてあることは、すべて正確だ。ここに書いてあることから読み取れることは、六姉妹……いや第四王女を除いた五人の誰かが、国民の支持を得るのとは別に、ライバルを蹴落とす工作を行っているということ。


 それを卑怯と言うかは、俺は関与しない。ただ、俺は卑怯とは思わない。手段はともかく、他人を蹴落としてのし上がろうとするのは、人間ならば当然であろう。その『(しまい)殺し』という手段を実行に移す肝の座った依頼主に、脱帽する勢いだ



「……ふぅ」



 一度目を通した資料。これに限らず、一度読んだものは燃やして消し去ってしまうのが俺のやり方だ。一度読めば、必要な情報はすべて頭に入る。それに、資料(こんなもの)を残していてはあとあと面倒だからな。


 火はいい。すべての証拠を、跡形もなく消し去ってくれる。加えて、証拠隠滅のための火は、いろんなところで灯っている。なにせ、生活のためには必要不可欠なものだ。


 懐から、『魔法具』を取り出し、それを利用して火をつける。紙は、簡単に燃えていく。



「……」



 家にたどり着き、中に入る。家とは言っても、最低限の生活ができる手入れしかされていない。家というより拠点と言う方がいいか。この国で活動する際の、拠点。


 なにせ、今度の仕事はこれまでとは違う。一国の王女を暗殺するなど、この十余年の生活でも経験のなかったことだ。しっかりと段取りを立てる必要がある。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ