表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/46

四話 アルクド王国第四王女



「アルクド王国第四王女、ティーラ・テル・アルクド……か』



 貰った資料と標的の容姿が映った紙、それらを見ながら呟く。


 現在、俺はあの地下室から出て、帰路についているところだ。デルビートに渡されたこの資料に書いてあるのは、今一人ぼやいた通り。


 アルクド王国という国……つまり、この国だ。治安がいいと評判で、さらには文明の発展した国として他国から一目置かれている。。


 まあ治安がいいというのも、それは表の話。現に、何度もこの国で誰かを殺してくれ、という依頼を受ける。どんなにきれいな国だって、裏ではどこかの誰かの黒い陰謀が渦巻いているものだ。


 それを、十余年で腐るほど見てきた。だが……



「まさかの、王族とはな」



 殺しの対象と指定されたのは、この国の第四王女、その名は何度も頭の中で繰り返した。ティーラ・テル・アルクド。その名くらいは、さすがに俺も知っている。なにせ王族だ。


 資料と共に渡された紙には、第四王女の姿が映っている。そこにある風景、人を念写する『魔法』でも使ったのだろうか、ずいぶんと気合いが入っている。いつもなら容姿を細かく書いた資料程度だというのに。


 見たところ、14、5の少女ってところか。だが、まだ幼いながらも紙越しでもわかる気品と強さが見てとれた。


 さらに、目を引くのがその容姿。その瞳は、まるで宝石でも埋め込んであるかのような輝きを見せ、赤く輝いていた。銀色に流れる髪は、腰まで伸びていて、紙越しでありながら輝いているようにすら感じる。


 王女と言えど、少女。少女と言えど、王女。もしも王女なんて肩書きに生まれなければ、こうして命を狙われることもなかったのだろうと思うと、ほんの少し哀れに思う。



「少し、な」



 所詮、こいつは殺しの対象……俺にとっては金づるだ。しかも、対象が王女なだけあって報酬もこれまでとは桁が違う。俄然やる気になろうものだ。


 この、恨みなんか誰からも買ってませんと言わんばかりの顔……この世界は、きれいなもので溢れている。汚いものなんて存在しない。そんなことを本気で信じている目だ。


 残念ながら、それは自身が殺しの対象に選ばれたことで、儚く崩れた。この世界は、どうしようもなく汚いのだ。そして汚いことを考える誰かが、殺しを考え依頼する。


 第四王女が、ただの少女だったならば誰がこいつを殺そうとするのか、検討もつかない。だが第四王女が第四王女ゆえに、彼女を狙う者は限られる。


 俺のようなフリーの暗殺者には、仕事が回ってきても依頼主が明かされることはない。依頼主から直接の接触がない限りは、か。直接組織に属していない人間に、依頼主を明かすことはできない……ということだ。


 だからこれは、想像でしかない。王位継承権を我が物にするために、第四王女の身内が……彼女を殺そうとしている。ライバルを一人でも減らすために。もしかしたら、第四王女以外も狙って、別々の暗殺者に依頼したのかもしれないな。



「……難儀なものだ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ