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二十二話 次の拠点へ



 拠点を移すとは言っても、大胆に何キロも動くわけではない。そうすると、移動の間にまた見つかるリスクが高まるからだ。近すぎず遠すぎずが理想的……言うのは簡単だが、見極めるのはなかなか難しい。


 今まで寝床に使っていた拠点は捨て、新たな場所を探す。この村よりも距離はあった方がいいだろうが、アルクド王国よりもそうは遠くない場所が理想的だ。少ない日数であってもそこで暮らすことを考えれば、それなりに生活感も欲しい。



「アルフォードさぁん、まだ着かないんですかあ」


「そもそもどこか目的地があるわけではないからな、いつ次の拠点を見つけられるかは未定だ」


「えぇえ」



 このアルクド王国第四王女、ティーラ・テル・アルクド……彼女の命を守ることが、俺の仕事だ。だが、もちろん迫り来る刺客を返り討ちにしていくだけではない。それだけでは単なるいたちごっこだ。


 刺客を捕らえ、誰が第四王女を殺そうとしているのか聞き出す。その上で、首謀者をもう手出しできないようにする。殺してしまえば手っ取り早いが……殺しは第四王女の意に反する行為だ。


 殺さず、生かして拘束する……その後第四王女に引き渡せばいいだろう。その後の処遇は彼女らが決める。


 行方知れずとなった第四王女が、自分を殺そうとしていた者をつるし上げる……それで、俺の仕事は終わりだ。王国の王女が、姉妹を殺そうとしていたなど明るみになれば大混乱となるだろうが……その後の情勢にまで、興味はない。



「ああ、なにか見えましたよ!」


「……集落か」



 ふと前方に、人の住んでいるであろう土地が表れる。村ほど大きなものではない……小さな集落だ。


 先程の村と比較すると小さいが、身を隠すならもってこいだ。



「よし、ここにするか」


「……はい」



 なにか不満なのだろうか。それでも、言葉に出さないだけ成長している。それとも、言葉にしても無駄だと知ったか。


 幸い、小さいとは言っても空き家はいくつかある。そこを使わせてもらうとしようか。



「よし、ここを使わせてもらう許可を取ってくる。休んでていいぞ」


「はぁい。……依頼主の私が立場上なのにな」



 別に空き家を使うのに許可はいらないだろうが、よそ者が使っていると知れたら面倒になるかもしれない。そのごたごたに巻き込まれ、第四王女の正体がバレてしまう可能性も……それは、勘弁だ。


 空き家の使用許可は二つ返事で下りた。元々使ってなかった家、特に問題はないとのことだ。むしろあんなボロ家で大丈夫か、と心配されたほどだ。


 この集落の人間は、お人好しらしいな。



「さて、許可は取ってきた。あんたは、しばらくここにいろ。ただし、勝手に出歩くなよ。家の中でならなにしててもいい」


「え、なんですかそれ。私を置いてくんですか?」


「すぐに戻る。じゃ」


「ちょぉー!?」



 俺は今から、アルクド王国の様子を見てくる。第四王女が失踪してから数日、果たして国はどうなっている?

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