十一話 侵入
あれから三日。必要なものを揃え、侵入経路を確認し……その時は、来た。今の時間帯は、夜。暗闇が辺りを覆い、俺にとっては動きやすい空間だ。
さて、と。ここからは計画した通りに動くとするか。まずは、ここから城内に移動する。
近くの建物から、屋上から飛び城壁を越えて城内に侵入する。そのためにどの建物から飛べば一番スムーズにいけるか、すでに調査済みだ。
「……よし」
建物の屋上から、城を見てみれば……なるほど、警備の数が尋常ではないことがわかる。だが、城内の警備はわりと少なそうだ。
助走をつけ、飛ぶ。そのまま、勢いを乗せたままに飛び、飛び……城壁を越え、城の敷地内に入ることに成功する。敷地内に侵入することは、問題ではない。ここから城内、そして第四王女の部屋に到達するまでが問題だ。
「……」
ここで立ち止まっているわけにもいかない。城の地図は入手し、すでに頭の中に入っている。抜け道もな。
こんな厳重な城だって、抜け道の一つや二つはあるものだ。そこを辿り、城内へと侵入……するところだ、普通ならば。だがすでに、第四王女の部屋がどの位置にあるかは調べてある。それが外部に接してある位置ということも。
ここでいざ誰かと鉢合わせすれば、声をあげる前に気絶させることは容易い。標的以外は殺すつもりはない、だから気絶に留めるのみ。
誰かに見つかってしまう前に、部屋の真下まで移動し……その場でジャンプ。14、5メートルほどの高さがある位置だが、俺にとっては造作もない高さだ。
窓際に、手をかけられる出っ張りがあり……そこへ、手をかける。
「……ここか」
ついに第四王女の部屋まで辿り着く。ついに、というほど苦労もしていないが……これであっさりと第四王女を暗殺できるなら、準備に三日もかけることはなかったな。
……いや、どこでなにがあるかわからない。下調べは、大事だ。
「よっ、と」
窓際に手をかけ、ぶら下がった状態から体を引き上げる。腕一本のみの力だが、体を持ち上げることくらい簡単なことだ。
このまま一気に、窓を蹴り破りたいところだが……そんなことをしては、窓が割れた際に激しい音が鳴ってしまう。そうならないために、まずは窓際を足場として確保し、音をさせないよう侵入しなければならない。
窓ガラスを音もなく割るなど、簡単なこと……部屋に侵入した際、中にいるであろう第四王女に声をあげさせないことだけが……
「……ん?」
体を持ち上げ、窓際に足を置く……そこで、異変に気づく。窓が、開いていた。
予想外であったが、考えてみれば不思議なことではない。夜風に当たりたいがため、窓を開けていたということもあるだろうわ、そうして、体を完全に引き上げたとき……一つの視線と、目があった。
「……」
「……」
そこにいた少女と、視線が交錯した。