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勇者イネスシャクラ当時17歳…。
我が国を魔王軍から守っている若き人類最強の剣。
沢山の国が滅び…今も他の国は魔王軍から想像を絶する被害を受けていたが…我が国は勇者イネスシャクラのお陰で…ほぼ被害を受けてなかった。
それで…他の国から勇者を引き抜こうと接触して来た事もあったが国の総力を挙げて阻止していた。
それと彼が何かの罪を犯しても父上…国王陛下以外は彼を裁く事を出来ないようにしていた。
その理由で近衛兵も彼を捉える事は出来ない…。
…こんな変態に守られていると思うと死にたくなってきた。
しかし…自室に戻って侍女達に彼の事を聞くと凄く評判が良かった。
貴族からセクハラを受けていた侍女の悩みを解決してあげたり…危険な魔物を苦労して倒して得た貴重な薬の材料を病気で苦しんでいる料理長の娘の為に惜しまずにタダであげたり…下の者達には凄く慕われていた。
その話を私は信じられなくてこっそり彼をつけてみた。
「なぁなぁ…おっさん」
「なんだ?」
彼は父上を王さんと呼んでいた…。
本当に無礼も程がある…。
「3日前…ダマイナ貿易都市を守ったじゃん?」
「うむ…それで?」
「ちょっと…少し褒美をくれよ」
「先週援助金を渡したばかりではないか…」
本性を現したな…。
一体何を要求してくるか…国王陛下…お労しい。
「確かにもらったけど…」
「もらったけど?」
「その防衛戦が激し過ぎて痛んだ装備のメンテ費用で全部なくなったよ…もう服もボロボロになってる!新しいのが欲しいの!パンツもデッカイ穴が開いてすーすーするの!…」
…………え?
「……っていくら欲しい?」
「……ちょっと大金だけど…き、き、金貨3枚ほど…いや!2枚でもいいよ!」
「援助金の半分も要求するとは…まあいい3枚をやる…ほら」
父上は小銭袋から金貨3枚を取り出して勇者の前にポイと投げた。
「やっほぅ♪ありがとう!おっさん!」
それを拾って喜んでいる……人類最強の男は世間知らずのバカだった。
それを利用している父上を見て自分の中に流れている血を一滴残さず抜き取りたくなった。
彼は買い物をしに城下町に出て…何故か私は彼をこっそりつけていた。
最初は串焼きによって美味しそうに食べていた。
「おっさんご馳走さん!いくら?」
「まあ…今日はサービスしておくよ…いつも守ってくれてありがとうな」
…民にも慕われているようだった。
「……ならもう一本サービスしてくれよ」
「お…おう」
図々しい奴でもあったが…貴族、平民、スラムの人、奴隷まで誰にも和気藹々で同じに接していた。
これが勇者イネスシャクラ…。