62. あーっ♡ もうっ♡ ジェストさまぁ♡♡
「ねえねえ、パティちゃん。」
「あっ、水のお姉さま、ボクは破壊が目的じゃなくて、ただ、ジェストさまと愉しみたいだけなの!」
「ええ、ええ。……だからね。私はいないものとして、関係ないんだからね?」
「はぁーい。」
完全に空気なのはむしろ豚性廃トリオで、廃エロフなんて、これ幸いと循環の結晶さまに会ってお話するという目的を果たそうとしているんだ。
そして、豚畜生は事の成り行きを見逃すまいとアリーナ席の確保を急ぎ、性女は手持ち無沙汰なのか、豚畜生を嘲いはじめたぞ。
具体的には、正座待機する豚畜生の背中に立て膝で寄り掛かり、ハゲ頭の上にご自慢のメロンをふた玉乗っけるという遊びだ!
まあ実際重いし、置けるものなら置きたいんだよね、アレ。
それはともかく、今日も今日とて黄色いコスプレ修道服がボディラインを強調して、あまりにもエロティックなベキ子だ。
「パティお嬢さま、楽しそうねぇ。」
「ふごふご。」
そして本日もボールギャグで口を塞いでいる豚畜生。縄化粧に年季が入っている。
「ねえ、ジェストさま。ボク良いこと思いついちゃった。」
「なんでしょう?」
何気ないひと言で気を引いた隙に、揺らめいた左手がジェストの背後に現れて、襲い掛かるのだ。
「――おっと。」
しかしね?
それでやられるジェストでは、ないのだ。
王都では吸着の魔導師さまや妙齢の魔女さまがいたから、気が取られてパティちゃんに遅れをとったけれどもね?
今はパティちゃんだけを相手にしていれば良い。
「怖いお花だ。」
「もぉ、せっかくジェストさまを殺して、永遠にボクの下に置いておこうと思ったのに。」
「残念ですが、パティお嬢さまにはお仕置きをしないといけないようですね?」
「してっ♡♡ くださいませっ♡♡」
「まったく……。」
二人の殺し愛は、一見すると退屈だ。
パティちゃんは動かないし、ジェストもパティちゃんに近づくことなく、円を描くようにパティちゃんの周りを歩きながら、何かのタイミングを窺っているようだ。
しかし。
何か、決心でもしたのかな?
不意にジェストがパティちゃんの下へと足を向かわせたのだ。
それは、あまりにも優雅な歩みだったから、誰もが一瞬呆けてしまって、気付いたらパティちゃんは二度目のアゴクイされちゃったのだ!
「ぁ♡」
「こら。おいたが過ぎますよ?」
「だって、ジェストさまに負かされたいんですもの♡♡」
パティちゃんは猫なで声で、精一杯の愛らしさを伝える。
同時に、影が何本もジェストに殺到した。
その中のどれかとどれかに、何物も裂き、何者も断つ一対の双短剣が仕込まれているのだろう。
それがどれだかわからない。
ゆえに、ジェストはすべてを避けきらなければならないのだ。
だから。
ジェストはすべてを避けきったのだ。
「やっぱり、ジェストさまは強いのね♡」
「お褒めに与り恐悦至極にございます。」
まだまだ余裕があるのか、ジェストは気障ったらしく一礼して、消える。
「背中が丸見えの服、ですね。」
つつーっ。
「ひゃあっ♡ あっ♡ もお! 背中は弱いのっ♡」
「おっと、だから撫でるのでしょう?」
振り返ったパティちゃんが見たものは、ツインテールの香りを嗅ぐジェストの姿だった。
「えっ、えっ? ちょっとジェストさま!?」
「良い香りですね。」
黒い牡丹になったのだから、パティちゃんの身体からは常に芳しい花の香りがするようになったとか。
「はい……っ///」
おや、クンカクンカブレークですか?
ジェストさん、髪の毛の束を通して深呼吸するとは、さぞかし良い香りがするのでしょうね。
そして、そんな至福の時間もやはり、パティちゃんの攻撃によって打ち破られる。
「はぁ……っ♡ はぁ……っ♡ はぁっ♡ ジェストさまぁ♡♡ ね? ねえ? ちゃんと、ボクを負かしてよね♡」
「それを言うなら、パティお嬢さまこそ、まだまだ全力じゃないでしょう?」
全力ではないけれど、連戦の疲れでそもそも全力が出せない状態だった。
「今はね?」
「はい。」
「タイミングを窺っているところなの♡」
「なるほど。」
パティちゃんから離れること6歩。ジェストは大袈裟な動きで驚きを表して、そして告げるのだ。
「私もです。」
~to be continued~





