61. 本気で殺します♡ だけど、返り討ちにして欲しいの♡♡
そもそも。
気障ったらしいイケメンの道化師、ジェストがパティちゃんに興味を持ったのは、自分と同じ、混ぜ者の匂いがしたからだ。
いや。
それは、苛立ちだったと言って、良いかもしれない。
王都へ向かう途次、立ち寄った都市イェリンガで見かけた無防備な、同族。
その無防備さに、どうしようもないほどの苛立ちを覚えてしまったから、虐めたくなったのかも、しれない。
なぜならば。
混ぜ者は俗っぽいのだ。
純粋な奔流の眷属ではないから、欲望も純粋じゃなくなってしまう。その結果、欲があちらこちらへ定まらない間に、あちらもこちらも欲しくなる。
ゆえに。
純粋な眷属たちよりもずっと、俗っぽい存在になってしまう。
特に。
戯けた影法師のような、生れつきの混ぜ者で顕著なのだった。
だからこそ。
ジェストは、パティちゃんに対する引っ掛かりのような苛立ちを覚えながら、その肉体に微かに欲情してしまったんだ。
それ自体は、「お、あの子エロいじゃん。」くらいの些細なものだったのだろう。
けれど、相手はパティちゃんだ。真に紳士でないジェストの獣欲の香を、嗅ぎ分けてしまうのも無理はない。
そんな切っ掛けで、パティちゃんと繋がりが出来たジェストだったけど、別にパティちゃんに恋したワケじゃないんだ。
混ぜ者である彼が、昼夜の化身の軛から解かれるために必要だったこと。
そして今までの仕打ちの仕返し。
そのためにパティちゃんを利用したかっただけなんだ。
あと、ついでにパティちゃんを犯すのもアリ。
その程度の、命懸け。
実に道化師な理由だね。
「ふーん、へぇー、そうなんだ。……恋、だね。」
「あ! お姉さまもそう思います?? ジェストさまったら、ツンデレなんですよぉ!」
「ねー。本当に素直じゃないんだから。」
「……はあ、もう、それで構いませんよ、レィディーズ。」
ジェストは洗いざらい話すという羞恥プレイに、、、羞恥プレイ。
羞恥プレイ!
いや、羞恥プレイは一般性癖か。
えっと、ティータイムを楽しんでるよ。
循環の結晶さまと、パティちゃんと、ジェストの3人で。
「いやんいやん、ジェストくんってば、パティちゃんに好きだっていうのが恥ずかしいからって、ただ、犯したいだけだ、なんて情熱的っ。」
「でしょでしょ! ボクと二人っきりのときだって、おっぱいを揉んですらこなかったジェストさまなの! さっきだって、ボクのピンチに駆け付けてくれるし!」
「そうそう! かっこいいわあ。」
「絶対ボクのこと、好き、、、でしょ? ジェストさまぁ♡」
「……それで、いいですよ。」
ところで、なんでジェストが循環の結晶さまと知り合いかっていうと、ジェストの母親、昼夜の化身の妹が、循環の結晶と仲が良かったからだよ!
「それはそうと、遅いわねえ。」
「破壊と破滅の結晶さま?」
「ええ。庭で豚を転がして来るんですって。」
「え、それは楽しくなさそう。」
「私もそう言ったのよ? でも、行くって。」
「ふーん。……あ、そうだ。いいこと、思いついちゃった。」
「なに?」
「ちょっと、ジェストさまと殺し愛したいな、って。」
次の瞬間には、パティちゃんは影に溶けてジェストの背後に迫り、邪龍の双短剣で襲い掛かっていた。
「――急に、どうしたのですか?」
しかし、ジェストもまた実存を欺いて、パティちゃんの攻撃を華麗に避けていた。
それだけでなく、パティちゃんの無防備な項を撫で、「ひうっ♡」なんて可愛いメス声を奏でている。
ちょっと恥ずかしそうに、モジモジと危ない笑顔を浮かべながら、パティちゃんは振り向いて言い放つのだ。
「えっとね? ……ここで本気でジェストさまと殺りあって、負けてメス犬になったら、魔王陛下に祝福して貰うの、ステキじゃない?」
だから。
「本気で殺します♡ だけど、返り討ちにして欲しいの♡♡」
乙女にしては、唐突な愛が重すぎるよパティちゃん!
~to be continued~





