54. ………………………。
「まあまあ、そんな怒らないでよね。」
「誰だって色々と忘れるものですの。」
いや、豚性廃トリオは動けなかっただけだ。
「だーかーらぁ。」
「この、最弱の黒く紅い牡丹を、陛下のお膝元へ届けるだけなのよ。」
確かにパティちゃんご一行さまと目的地は同じ。
だけどメッッッチャ不安になるのも無理はない。
だって案内人が嗜虐と被虐の化身さまなんだよ?
ところでさ。
パティちゃんが乗ってた馬車、どこに行ったか気にならない?
ならない? なって!
うんうん。そうなんだ。
パティちゃんが乗ってたあの馬車、展開して保存していたんだよね。
詳しくは↓から「くっ恋」を読めば良いんだけど、妙齢の魔女さまも、馬車を展開していたじゃない?
あれあれ。あの魔法を覚えた豚が、保管していたわけだ。
だから。
ベキ子が容赦なく豚を叩くのだ。
「おらッ!」
あらやだ、いつもと違って野太い声。
そんな声も、出せたんですね。
「おっほぉっ♡ 『それでは、おめかしして向かいましょう』ぅ♡♡ ぅンほほほほおおおおおおおおっ♡♡♡♡」
淡く輝く豚の目の前で、晩餐室に似つかわしくない白とピンクの馬車が顕現していく。
うん、でもさ。
豚が紡ぐにはキモ過ぎる詠唱じゃないか。なんで、もっとオジサンが紡いでもキモくない詠唱にならなかったんですか吸着魔導師さまぁ!
ちょっと吐きそうです私。。。
↓から見てくるといいよ。この魔法を創ったの、ヴィヴィアン・マリーゴールドさまだから。
それはともかく。
こうして気絶したパティちゃんを運ぶ箱が現れて、愉快なご一行さまを搭載して、嗜虐と被虐の化身さまたちがブッ飛ばすんだ。いや、表現としては、引き連れていく、が正しいのは知ってる。
でもさ。
速度がオカシイのは雷だからで納得できないし、アホー鳥を何羽も焼き殺してるし、やっぱり見た目的にも、中の人の感想的にも、ブッ飛ばしているが正しいと思うんですよね。
そして虫さんは敵陣ど真ん中で置き去り。
そういえば、私の中学時代のアダ名は、どういうわけか「置き去りパンティー」だったんだけど、理由がわかる人がいたら感想欄で教えてね。
さて。
色んな意味で声も出ない爆速移動の眼下では、魔王軍と貪食と卑近の化身連合軍が戦っていた。
「あれ?」
「陛下よね?」
一対だけ、この空で平静を保ってた。
当然、嗜虐と被虐の化身さまたちだ。
二対の眼球が捉えたもの。
それは絶望の足音だった。
なぜ、破壊と破滅の化身、つまり魔王陛下が前線にいないのか、いや、いるのに攻め続けられているのか? と、疑問に思ったことだろう。
なにせ、貪食の眷属2位は、嗜虐と被虐の化身に斃されるほど弱い。
では、その親玉の化身はどうなのだ? と思ったことだろう。おそらく嗜虐と被虐の化身よりも弱いのではないかと思ったことだろう。
そう。
今まで、戦場に魔王陛下はいなかったんだ。
「みんな死ぬね。」
「陛下が送ってくださるのだから、光栄なことだわ。」
その歩みのひとつで、絶望の輪が広がるのだ。
すべての存在に、等しく訪れる死という終焉。
それを、等しくすべての者に与える存在が、破壊と破滅の化身だ。
絶望による救済を齎す化身だ。
ゆえに。
「あーあー。」
「すべて台なしね。」
「まあー、豚だし?」
「ええ、豚じゃダメ。」
その、豚という言葉に反応した豚畜生は、反応してから気付かれないように息を潜め直したんだ。
それはともかく。
隊列も、戦線も、何もかも意味を為さない。
戦場において、邁進する死に対して、停滞を選ぶ者などいない。
ゆえに。
敵も味方も関係なく、ただただ魔王陛下から逃れようとヒステリックな暴走を始めるのだ。
「でさあ。」
「なあに?」
「陛下に届けるなら、あそこに行った方が良いのかな?」
「さあ? 私は、ただ、城へ届けよと陛下がおっしゃっていたって、昼夜の化身が言っていたから届けるだけ。」
「だね。」
昏迷を極める戦場を余所に、ひと筋の雷が空を走った。
~to be continued~
「置き去りパンティー」略して「置きパン」っ><
なぜ、中学時代の私のアダ名がそうなったのか、考えて欲しいのですっ><
感想欄で待ってますっ><





