50. 美味しい絶望じゃない♡ ねえ?? あはは♡
サディズム。という言葉を聞いたことがあるだろう。
そう、SMのSのことだ。
最近では、マゾのことを労ってこそだとか、スレイブのSだとか、見当違いなことばかりで本質を見ない言説が多いよね。
サディズムも、そしてマゾヒズムも、本質的には自己完結するものなんだ。
サディストが痛め付ける相手はマゾヒストじゃなくたって良い。本当に嫌がって、泣き叫ぶところが見たい。
それはマゾヒストも同じ。相手がサディストである必要性はないし、自分のための加害でなくても構わない。
それが、サディズムやマゾヒズムの本質だ。
だから。
「あ……、あの時の。ねえ、アレク、ねえ。」
「シャーミィ?」
「あの方、村に来た、パティさまじゃないのかな。そうじゃない!?」
「え? あっ。ああっ!」
二人がパティちゃんに気付いたとき、パティちゃんは極悪に口角を上げた、ニタニタした笑みを浮かべていたんだ。
「でさあ、2位。これから何をするのー?」
「まあまあ、見てろよメスガキぃ。」
「ふふーん。」
そんなパティちゃんの表情は、明るいステージからは見えづらかったのかな? きっと見えてたら、アレクとシャーミィだって躊躇したと思うんだよね。
「助けてくださいっ!」
「助けてくれ! おれ! こんな!」
ジャラジャラと煩く鎖を鳴らしてさぁ、駆け寄ろうと、したかったんだよね?
「おい。」
それはね?
舞台上の、別の豚が引っ張って許さないんだ。それで、二人は無様に倒れるんだ。
「きゃあっ。」
「痛っ。」
それはそうとパティちゃん的には、貫頭衣みたいなボロい服装ってエロくて良いなあ、なんて思えるわけだ。
観戦してる側の意見だね。
「お、お前らのご主人さまは、だれ、誰だだ??」
ジャラり。
ま、アレクとシャーミィというか、シャーミィの運命は、わかりやすいよね?
「そ、そそれでは、これより、、、はじめるだ。」
それは、端的に言えば凌辱だ。後ろに何匹も控えている凌辱だ。
「おいっ! やめろシャーミィに近づ――ぎゃっ!」
「じゃまだだ!」
「やめてアレクに酷いことしないで! いやっ……来ないで! いやっ! いやぁ! 痛づっ!」
凌辱だ。
舞台上の、主役の醜悪でそこそこな体躯の豚。
その凌辱のために他の豚が、アレクを押し止める。
「止めろ! やめろ薄汚い手でシャーミィに触るな! ぐふっ! やめてくれぇ……っ!」
凌辱だ。
「あっあっあっあっあっあっあっあっあっあっああ! ああっ!」
凌辱だ。
「やっやめてくれっ!」
凌辱だ。
「嘘だ! うそだうそだうそだうそだシャーミィ!」
凌辱だ。
「やめてくれ……やめ……。」
凌辱だ。
「殺してくれ……殺して……。シャ……ミィ……。」
声は虚しく消えるのだ。
その饗宴が、続くのだ。
豚たちの列は長いのだ。
その一部始終を眺めるパティちゃん。
「ふむ、良い趣味だな、2位。」
「だろォ? これで終わりじゃないんだぜ?」
そう、これで終わりじゃない。
貪食の眷属は、雄しか産まれないのだ。
だから、どうするか。他の種のメスに孕ませる?
いいや。
他の種のメスを、貪食の豚どもに変えてしまうのさ。
「あ。あ。あ。あ。あ。」
ほら、シャーミィの身体も溶けていく。
そして、豚の身体に変わるのだ。
それでも、パティちゃんが与えた印だけが嫌に目立って、どうしようもなく、醜い豚をシャーミィに結び付けるのだ。
そうして、豚にされたメスたちが、豚だろうが他の雄だろうが構わず仔胤を搾り取って、雄の貪食の豚を産み落とすのだ。
「うそだ、うそだうそだうそだ――そうだ! パティ……っ! なんで、なんで見ているだけだったんだ……っ! アンタどうにかできたんだろう!? ああ!?」
そんな、筋違いな怒りにパティちゃんは、冷酷だった。
「は? 自分が弱いのが原因だって、わかってて八つ当たり?? 何それダサーいっ。ウザぁ↑↑」
「ウザ……。くっ……。」
「なんだ。叫びたいだけとか、、、死ねよ。」
「あ……。あ……。」
そんな、酷薄なパティちゃんのやり取りを聞く、貪食の2位も、ご満悦だ。
「ショーはこれからだぜ?」
「……ふーん。」
そう、今まで押さえ付けられていたアレクが、メス豚に堕ちたシャーミィに何と言うか。
舞台上の自信なさげな豚が、アレクの頭を掴まえてね、シャーミィの方へと向けるのだ。
「ねえ、アレク。」
「うそだ、うそだうそだうそだうそだうそだお前はシャーミィじゃない!」
「わたしだよぉ……?」
ニタリ、と貪食の2位は嗤った。
「やれ。」
ズドン、とアレクの首が落とされた。
最期は、信じられないものを見る呆けた顔だった。
「……もう、いいや。」
そうして、かつてシャーミィだった貪食の豚は、他の豚に紛れて見分けがつかなくなる。そうして、悦楽の泥沼に溺れて、愛を忘れるのだ。
そういうショーだった。
「うん。良かったよ。」
「そうかァ。」
「じゃあさ。」
「あァ。」
「こっちも殺ろっか?」
~to be continued~





