48. なんだ、結局弱いんじゃん!
「アハハハハハハハハハ! 死んじゃえ! 死んじゃえーっ!!」
ゾウ、と呼ばれる巨大な蟲の上に組まれた櫓の低い欄干に足をかけ、哄笑を上げるパティちゃん。
こちらは騎士王の庭から魔王城へ向かう途中、反乱軍と交戦中の最前線だ。
「もぉ! パティお嬢さまぁ。危ないですからぁ、端に寄らないでくださいよぉ!」
なんて言いながら、的確に魔術を飛ばす性女ベッキー。今日も黄色のコスプレ修道服が、身体に張り付きすぎてエロいぞ。
え?
唐突だって?
何を今更。
前線までやってきたパティちゃんは、無事、魔王軍の連絡要員と会えたけど、結局のところ魔王城へ行かなければならないって言うんでこうして、ハチャメチャに前線を掻き回しているんだ!
迷惑なメスガキだよね。
だけどパティちゃんみたいな力わざゴリ押し、っていうのは正解だったりするんだよね。
近づく者は水色頭の廃エロフこと、ロッちんが払いのけるんだ。
そして、豚はパティちゃんの盾だよね。
「アハハハハハハハ!」
蟲の走る先に、絶望の顎が開いていた。それが、断頭台のように、ザクザクと命を処理していた。
絶望の邪龍だった。
うん。
そりゃ、混乱するよね。
魔王陛下は、破壊と破滅の化身さまだ。
そして、邪龍はその眷属。
反乱軍にとっては、背面に突然、攻めていたハズの相手の気配が出現して、しかもそれが自軍を蹂躙し始めるんだ。
悪夢だよね。
あ、パティちゃんが乗ってる蟲が、魔王軍の連絡要員だった者ね。
巨大化してもらったんだ。
「なにこれ、よわーい! これでよくボクの邪魔をしようと思ったね!」
いや、そんなことは思ってないと思うよ?
「ってゆーか、背面ってことは、主力じゃない感じ? あれあれあれー?? もしかして、ボクって弱いものイジメしちゃってるのかなぁ??」
とかなんとか言って、楽しそうじゃないですか。
ベキ子も、思う存分魔術をぶっ放して、良い汗かいたと楽しそう。
豚畜生は、パティちゃんの代わりに矢とか魔法とか魔術とか受けて再生して、その後に、パティちゃんから「邪魔、どいて。」って叩かれるとかいうご褒美を賜ってご満悦。
廃エロフだけは、ロリがいないと、機械的に触手でお掃除をしているんだ。
「ねえー、このままイケるとこまでイッちゃおーか? ほらほら、蟲! キモいけど走れ!」
一番割を食っているのは、連絡要員だったハズの、哀れな蟲さんかな?
「豚みたいな顔の何あれ、キモーい! あと、なんで刃物が生きてんの?? え、包丁は台所で大人しくしてなきゃダメって、言われなきゃわからない系なの!? うそーっ! ありえなーい!」
反乱軍の背面、騎士王の庭方面軍は、中央を一点突破されて、深く深くパティちゃんの侵入を許してしまっていた。
騎士王の騎士たちには叶わなかった蛮行。
やはり、邪龍は強かったのだ。
「ってゆーか、蛇より弱いって、なにそれウケるんですけどっ!」
だけど、パティちゃんは後ろを顧みない。
その後ろには、誰も続いていなかったんだ。
とはいえ。
パティちゃんが、そんなことに頓着するワケないじゃないか。
「行け行けイケーっ!」
そんなパティちゃんたち、死にたがり突撃隊が向かう先に、かつて折り目正しい紳士が住んでいたことが偲ばれる、立派な屋敷があったんだ。
~to be continued~





