46. 騎士王さま……♡
パティちゃんが目指しているのは、イケメン騎士王がいるという、騎士王の庭の城。
途中途中の村々でイベントを開いては、莫迦な雄と買手のつかない雌を食い散らかしたのはベッキー。
そういうわけで、やってきたよ『緋色の風』!
え?
騎士王の城の名前だよ!
だって、めっっっっっちゃ大っきな緋色の風車が城の天辺に付いて回っているからなのだ!
「何あれウケるんですケド!」
なんて言っている間に騎士王の配下の騎士たちに見付かって、誰何をされて、そして外から来た謎の大使として、丁重にもてなされたんだ!
何がすごいって、騎士王の騎士たちはみんな、イケメンばっかりだったんだ。
だからパティちゃんも、満更でもない、だらしない表情になりかけながらも唯々諾々と、生まれたときから淑女だったかのように振る舞うのだ。
そして、あれよあれよという間に、騎士王に謁見することになったんだ。
「あなたが、知謀の化身宰相閣下へと参る外の大使、だと。」
「ええ、ボクは高嶺の花の女王。」
パティちゃんは当然、礼儀も淑女の礼もわからない。
それでも、いつものような不遜な態度はおさえてる。
とはいえね?
常識の外側にいるのは明らかだった。
それでも。
騎士王は気さくに柔和に微笑んで、パティちゃんを応接室へと案内したんだ。
「遠くから、疲れているだろう? こちらもいくつか話をしなければならないし、寛げるところへ案内するよ。」
「喜んで。」
イケメンは、良いものだ。って顔に書いてあるぞパティちゃん。
何も考えてないね?
「……さて、こちらも色々と情報は持っているから、そのすり合わせをしないかな?」
「はい♡」
「今、こちらでは貪食の化身と卑近の化身が、魔王陛下に反乱を起こしたことは、知っているだろう?」
「はい♡」
「我々、中間者は魔王陛下の政を支持していてね。反乱軍を後ろから攻めている最中なんだ。」
「はい♡」
「それで最近、そちらの王を狙った魔族がいた、というところまでは掴んでいるんだ。」
「はい♡」
おお、パティちゃん聞いているようで、全く聞いていないぞ。
「それで、レディー・花の女王は、どんな用件で知謀の化身閣下に?」
「はい♡」
さすがに上の空ではマズイのか、直ぐさまベキ子がフォローするぞ。
「パティお嬢さまぁ。」
「――え? ええ。ボクたちは――、」
いいかい、諸君。パティちゃんが用件なんて覚えているワケがないだろう?
「――?? ベッキー、なんでだっけ? 喧嘩でも売りに来たんだっけ?」
「そんなハズないでしょぉ?」
「うーん? とりあえず、報告? みたいな?」
「な、るほど?」
そうなりますよね、騎士王さん。
いやまあ、パティちゃんだし、わかってるワケないって思ってましたけど、中々ですね。
「まあ、おーさまがどうなっても良いんだけどね? 神代が広がっちゃったら、みんな困るしやめてっていうか、なんで? みたいな? 感じのことを訊きに来た、的な?」
「……そうかい。」
まあ、眉間にシワが寄るのも当然だよね。
わかる。わかるよ騎士王さん。
「あ、でもでも。じじょーに詳しそうな人なら、呼べるよ?」
「ん?」
「呼ぶ?」
「あ、ああ……?」
『ジェストさま、ジェストさまっ♡ 今、よろしいかしら♡♡』
パッ、とデリバリーされたのは、またしてもジェストだった。
~to be continued~





