44. なるほどなるほど♡
そういえば、パティちゃんと愉快なご一行さまって、久しぶりにつよつよお姉さまの護衛無しに移動しているんだよね。
しかも、魔境中の魔境、神代の土地だ。
当然のように魔物、魔族が襲ってくる。
魔物と魔族の違いは、意思の疎通が出来るかどうか。姿形は重要ではない。
「あ~!! 面倒!!」
「我輩も出よう。パティお嬢さまは、ごゆるりとお待ちくだされ。」
すでに、外では豚畜生と性女が乱舞していたのだ!
「むほほほほほほほほほほぉ!!」
この豚、盾役としては全攻撃を受けるだけ受けて、自己回復速度で持ちこたえるタイプだ。
ゆえに、盾など持たず、縄から剣、槍や弓に至るまで武芸百般の熟達した技を魅せる。
そして性女ベキ子は、魔術の大家オ=ノーントの異端児としての才能を、遺憾無く発揮している。
雄っぱいロケットファイヤーは当然として、パツキンの髪の毛を燃え上がらせるほど輝かせて、数々の爆裂魔術を起動しているぞ。
「『煉獄』そしてぇ『噴火』ぁ! かーらーのぉ、おっぱいファイヤー♡♡」
今更だけど、雄っぱいとは本来、筋トレし過ぎて盛り上がって、おっぱいみたいに見えるようになった雄の胸のことで、間違っても雌っぽい胸のことではないのだ。
このお話では誤用と知って、押し通してもらおう。
そして廃エロフのロッちんは、一番エグい戦い方をしているんだ。
わかるかい?
地面から、急に槍が生えて串刺しになるという、絶望を。
空を飛ぶものだって、たいていはいつか、地に降りてくる。
その瞬間を狙われたら、お終いだ。
地上にいるものも、その場で動かずにいることは出来ない。
今、立っている場所が安全であるという保証がないのだ。
「苦しかろう? 生とは、その実態を現せば見苦しいものでしかないのであろう。」
めちゃ恐なのだ!
そんな、敵さんご一行さま方が、守られていそうな馬車に目を向けると、漆黒の影が溢れ出ていることに気がついたと思う。
あれほど、白を基調としてピンクで彩られた可愛くて上品な馬車が、真っ黒に見えるのだ。
パティちゃんのイライラが、あふれでちゃっているよね。
それが、邪龍の形を持って、首を擡げるのだ。
まるで、封印の箱から湧き出る絶望。
「死ね。」
それは、破壊と破滅の気配。
魔王の眷属。
つまりね。
この神代において、絶対的な王者の身内に手を出したって、悟っちゃったよね。
もちろんパティちゃんは魔王の眷属ではないけれど、それを敵さんたちが知るわけないし。
実際にこぼれ落ちた夜の忿怒が、抗いようもないほどの力業で、絶望という名の死の救済を右から左に一様に与えるものだから、戦意喪失は当たり前なのだ。
それほどまでに、破壊と破滅の奔流は、神代では絶対的なのだった。
その事実を目の当たりにしたパティちゃんはね?
「え!? めっちゃ便利じゃん! だって、それでも向かってくる男だけ選別したら良いんでしょ!」
って、ブレなかったんだ。
~to be continued~





