42. 外道?? 向かってきた時点でギルティでしょー?? なにゆってるの??
初撃。迸る轟音。
受けるは、盾役の豚。
「むふっ♡」
ご存知の通り、直ぐに復活する。
「え、キモ。」
「ヒドい生き物ですわ。」
「ちょっとー? ボクに断りもなく勝手に攻撃し始めるとか常識なくなくない??」
内心ドッキドキのクセに、舐められて、そのままではいられないのがパティちゃんだ。
「あと、出るまで待ちなさいよ!」
「ちぇー。まあ、いいよ。」
「早く出てきなさいな。」
嗜虐と被虐の一族は皆、ナルシストであって、一対の自己の中ですべてが完結している。
その外側とは、自己の間を彩るための、便利な外部装置か否か、でしかない。
パティを一刻も早く殺さねばならない、などという焦りもなければ、そもそも、パティに準備をさせることで自らが不利になっていくことにさえ、無頓着だ。
ゆえに。
最弱の魔女。パトリツィア・デル・フィオーレが、邪龍を纏う隙を、見過ごしてしまう。
それでも構わないからだ。
「ねえ、アンタたちって、ふたりで楽しむクチでしょ?」
苦労したのは、嗜虐と被虐の眷属から、性的な視線を向けられなかったことだ。
「うん。」
「だから?」
「いや、どっちが攻めなのかなって。」
「どっちも。」
「両方攻めて、両方受けるのよ?」
「そっか。」
脈絡なく、パティは影に溶けて、微睡みからこぼれ落ちて、そして二個一対の眷属の[書けないよ]に触れた。
魔女の毒は、理不尽だ。
「あがっ♡♡」
「きゃあっ♡♡」
単純に勝敗は決したぞ。
嗜虐と被虐の眷属が、絶対的に弱かったのではないのだ。
暗殺者の役割は、実存を欺く。
二個一対のふたりが、パティちゃんをただの魔女だと思っていたのが、すべての誤りだったんだ。
気配は、存在の残滓だけは、パティちゃんが立っていた空間に残されていたんだから。
「あはっ。ざーこ。あれだけカッコ良く出てきて、豚一匹ローストしてお終いとかウケるー! え、弱すぎないですかぁ!? 何しにきたの――そっか。」
そうだぞ、パティちゃん。
「何しにきたか、訊かなきゃ。」
うんうん。
「じゃあさ、ベキ子、ロッちん。生まれてきたことに感謝しか出来なくしてあげて。」
うん?
「はぁ~いっ。」
「よかろう。好みのロリっ子だ。」
なるほど。
そういう事情聴取もありますね。
特に相手はナルシストだ。自分自身の片割れが、自分自身以外を至上とするほど汚されれば、心も砕けるだろうという、考えだね。
何せ、触手と、抜き差しどっちでも食いたいモンスターという、救いの無いコースだ。
早めに素直になる方が、良いよね。
~to be continued~





