41. いきなり来て、死んでとかどの口開いてゆってるの?? バカじゃないのー??
正直、神代といえどもヴィヴィの統治する墓標の砂漠や、そこを抜けて着いた聖都周辺は、それほど危ない場所でもないのね。
それはヴィヴィが比較的温厚な化身であるから、とか、中間者たる人々が結界を貼って安定させている聖都だから、とか、そういう理由があるわけで。
聖都で聖王の執政のひとりに遣いの話を通して、「いざ魔王城へ!」なんて南下したその日のうちに、空模様が色々と変化したんだ。
あ、そうそう。
性女が聖都の歓楽街はつまらないとか言っていたのは、どうでもいい情報だけど、廃エロフは仲間から、循環の化身さまに会うようにって言われたらしいんだ。
「うわー、すっご!」
豚が牽く馬車。砂漠でも何故かまともに動いた、その窓からパティちゃんは顔を出して、空が黄色と緑のマーブル模様に蠢くところを楽しむのだ。
「はぁ。」
ぴしん……ぱしん。
「ふごふご!(そんなふうに、心ここにあらずの様子で叩かれるなんて!)」
「パティちゃんさまぁ、神代って、なーんにも面白くなかったですぅ。」
「そう? 宮殿で食べたご飯は良かったじゃない?」
さすがに知謀の化身への遣いともなると、扱いがグレードアップしまくって、しかも、ヴィヴィが偉い人と会わなくても良いように取り計らったおかげで、、、いや? その所為で、パティちゃんはメスガキムーブをする相手がいなかったのだ。
「それ、私は食べてないですしぃ。」
ぴしんぱしん。
「ふごふご!(やる気のないムチというのも、それはそれで!)」
「豚、うるさい。」
「むふぅっ♡」
「で、何をどうやって魔王城まで行くんだっけ? ヴィヴィお姉さまも帰っちゃったし、真っ直ぐ行くと、滝なんだっけ?」
聖瀑布。それは運命の果実と呼ばれる神代の大地の中央にあって、そして南北を分断する長大な滝。
それを東西どちらかから避けて下るため、大きく分けて二通りの道がある。
西は、百剣山と呼ばれる山脈があり、それをさらに大きく迂回しなければならない。
そして東は、循環の大森林が鬱蒼と広がっていて、豚の牽く馬車では通過できない。
「それって、真っ直ぐ下れないの?」
「――え?」
「だーかーらー。この馬車、真っ直ぐ滝下りとか、出来ないの??」
さて。
もし、あなたの上司がこういうタイプの無理難題を投げ掛けて来たら、どうしますか?
殺す ←
逃げる
ですよねー。殺すしかないですよね? まあ、説得に失敗したら、ですけれど。
「えっと、パティちゃんさま。。。それ、本気ですか?」
「ロッちんの水魔法でなんとか出来ないの?」
「……ふむ。難しかろう。」
「ちぇー、使えないのー。」
「ですですぅ! ここは順当に、教わった通り、百剣山を迂回しましょうよぉ。」
「そっか。」
仕方ないね。
なんて言っているから、聖都の結界を出ちゃうのに、警戒心が薄いんだ。
バチっと空間が爆ぜた。同時に僅かな発光があった。
「へぇー。今どき、こんなわかりやすいバカがいるんだ。」
「そう言ってはいけませんよ? お兄さま。彼らは彼らなりの精一杯なのかもしれないじゃない?」
その姿は、まるで生きたビスクドール。
少女のドレスに身を包んだ、少年の口調のマリオネット。
そして、少年の礼装に身を包み、少女の言葉を操る人形。
嗜虐と被虐の眷属だった。
「あ?」
突然現れた生意気なガキふたりにキレるメスガキという、わちゃわちゃした絵面。
「これ、殺しちゃって良いんだっけ?」
「確認くらい、取った方が良いのかしら?」
ふたりの間ですべてが完結する、厄介な奔流の僕。
「ねえ、花を鬻ぎ売らぬ女王っている?」
「いなくても答えなくても構わないわ。」
その得意は、雷を操ることにある。
バリバリと、空間が嬌声を上げた。
「死んじゃえ!」
「死になさい!」
「嫌に決まってるじゃない。バカじゃないの??」
~to be continued~
【ネタバレ次回予告?】次回! パティちゃん外道無双する!?





