39. 甘えていいのよ♡
さて、『神代』とは一体なんなのか。
そう思っている方も、多いでしょう。
パティちゃんがいる神代。
それは、運命に縛られた土地で、時の化身の歌が見せる幻とも呼ばれる歪で美しい世界なんだ。
感情と感情が、意志と意志が、運命と運命がぶつかって、そして混ざり合う場所なんだ。
だから神代の土地はそれぞれの管理者が、自分の領地を平定して安定を保っているのだ。
ルクスリアの園は、ヴィヴィアン・マリーゴールドだね。
そして、それぞれの土地をそれぞれの管理者が統治しているからこそ、神代では転移が難しい。
……ハズなんだけどねぇ。。。
「ジェストさまぁ♡♡ はあ……♡ 可愛い♡」
パティちゃんは、ご自慢の馬車……いや豚車で移動中、何か胸騒ぎでもあったのかな、ジェストの気配を探りだして、そして呼び出せてしまったのだ。
そんなジェストは、パティちゃんが切り付けた傷だけでなく、さらにいくつもの傷を負っていて、ありていに言えば重傷だったのだ!
だから豚畜生は、パティちゃんからご褒美を賜りましたよ?
ということで、ひざ枕。
眠る道化師の髪の毛を撫でているパティちゃんなのだ。
その表情は、愉悦に歪んでいるように見える。
うむ。実にお見せできないね。
「う……ん。」
「はぁ……♡ ジェストさまぁ♡」
あ、ヴィヴィお姉さまとウィリアムお兄さまも同行していて、今は、呼び出した湖畔でイチャついているよ。
そう、湖の、その先は存在していて存在していないんだ。
ふっしぎーっ☆
「……はぁ。――うん? お嬢さま……?」
「はい♡ ジェストさま♡」
と、ぱっと起き上がろうとするジェストに、パティは「大丈夫ですから、身体を楽にして?」などと言って押し留め、頭を撫でるなどしている!
そう、今回は「オギャらせ」だ!
正確には「バブみを感じさせて、オギャらせたい」だ。
つまり、、、つまりだ。
パティちゃんはメスガキを一旦、封印したぞ!!
そもそも。
パティちゃんは何でジェストをオギャらせたいのか、という話じゃない。
あ、えっと、バブみっていうのは、「年下の女の子に母性を感じること」ね? それで、オギャるっていうのは、「赤ちゃんプレイで甘える」っていうことなの。
それを、パティちゃん側から言わせれば、「バブみを感じさせて、オギャらせたい」となるわけ。
「なぜ、私は……。」
「胸騒ぎがしたの……だから、気配を通じて呼び出せないかな、って。迷惑だった?」
「とんでもない。私は……死ぬところだった。」
最弱の化身。その権能は、気配を操り森羅万象を察することにあった。
そのため「ここにいて、そこを知る」気配の操作、つまり、「遠くのものを身近に寄せる能力」が備わっていた。
それゆえ。
転移の自由が利かない神代において、例外的に神出鬼没を誇るのが、最弱であった。
その、最大の権能は「遠くのもの遠くのものを入れ替える」という妙技であり、これはまだパティちゃんには難しい。
今は「遠くのものを引き寄せる」ことが精いっぱいで、次は「遠くに自らを引き寄せ」られるように頑張るのだろう。
「よかった、ボクは、間に合ったのね。」
「ええ。パティお嬢さまのおかげで、命拾いをしました。」
柔らかで温かく、慈しみの心がこもった小さな手の平。それで頭をナデナデされながら、一方ではひざ枕と下乳によるサンドイッチという歓待を受けている。
何という包容力だ。
いいかね諸君。
パティちゃんは、戯けた影法師が息苦しくないようにと、太ももの膝側半分くらいのところに頭を乗せて、上を向かせて楽にして、そして寄りかかる程度に胸を当てているのだ!
その究極完成版は、ジェストの頭を太ももの付け根側に乗せて顔をお腹側に向け、たっぷりと心地よい重みのあるフワフワお餅で挟んで、そして、掻き抱くように小さなお手てで後頭部をナデナデするスタイルか、もしくは[書けないよ]なのだ!
おや、[書けないよ]は、ダメですか、そうですか。
というわけで、パティちゃんは甘やかしたいのだ!
傷ついたジェストの、気障ったらしい仮面を剥がしてドロドロにしたいのだ。
その妄想をしているのだ!
だから、ジェストに見えない表情だけは、愉悦に歪んでいるのだ。
声も所作も、慈愛に満ちた聖女のような、、、いやパティちゃんも性女だね。
うむ。
だけど、残念ながら、書ける方の最終形態まで持ち込んでも、ジェストは素直に癒されているだけだったんだ。
逆に、そこで堕ちなかったからこそパティちゃんは、さらにジェスト愛を深めたんだよね。
~to be continued~





