37. (あ、これは手を出しちゃダメなヤツですね!)
ぴぴぴぴぴぴ。
「……なにやってるの? ベッキー。」
ぴぴぴぴぴぴ。
「これですかぁ??」
「そう、それ。」
「脱毛ですよぉ。」
って自分の顔を撫でたり腕を撫でたりするベキ子。
そう!
今回は、毛の話だよ。
覚えてる? この「メスのわ」は、特殊性癖の小説だったよね?
ムダ毛。現代でこそ、それを厭う者が多いように印象操作された美意識。
しかし、しかしだね。
益荒男は毛むくじゃらでないと許せないと隠れて思っている男女は一定数いて、間違いなく支持されている性癖でもあるのだ。
中には、腋毛が生えていない女性には興奮できないという重病人もいるだろう。そういう病人は大抵、湯気のように立ち昇るエフェクトがかかった臭いフェチでもあるものだ。腋の汗こそが至高とか言い出して、上気した頬の羞恥心からにじみ出る背徳の表情に興奮してしまう困ったさんたちなのだ!
まったく、度し難いね。
いや、度し難いからこそ、良いのだ!
当然だけど、ヒゲが生えていない女性には興奮できない男性諸君らは、手遅れだから、そのまま突き進むのです!
さて、一般的にはムダ毛とされるそれら。
当然、異世界だから生えない道理はない。
「ふーん。」
ぺろん。
パティちゃんも気になる年頃のようだけど、捲って見えるのは淫紋だけだよ。
ジロジロ。
ジロジロジロジロ。
それでもじっくりと色んな所を確認しちゃうよね。
じーっ。
うんうん。って、パティちゃんは頷いたよ。
「ボクには、心配ないみたい。」
「え~☆ 」
「え?」
「何でもないですよぉ。」
ぴぴぴぴぴぴ。
「それってどうなってるの?」
「えっとぉ。私は爪に刻んでいるんですけどぉ、脱毛用に魔術を組んでぇ、撫でたところの毛が抜けるようにしてあるんですよね~。」
「え!? なにそれ面白い! ボクの爪もまだ余ってるから刻める??」
「 はぁい。今度、刻みますねぇ。」
「すぐには出来ないの?」
「いやですよぉ、妙齢の魔女と比べられちゃったら、私なんてまだまだですぅ。」
「へぇー。」
ところで。
ここはどこでしょうか?
照り付ける太陽。
暑い風。
砂浜。
そう!
砂漠だよ!
オアシスだよ!
神代に来ちゃってるよ!
「パティちゃん。どうかしら? ここが、かつて快楽の園と呼ばれた大きなお墓。」
「ヴィヴィお姉さま。ステキなところね。」
「そう。ありがとう。」
パティと性女が雑談していた、湖面の見えるサンルームに現れた、砂漠の女王、ヴィヴィ。その隣には、貴公子のお手本のようなイケメンが、優しげに笑っていた。
「紹介するわ。このひとが、ウィリアムさま。私の恋人よ。」
あ、パティちゃんは一瞬ガチ恋しかけたけど、ヴィヴィの視線があまりにも重くて、気持ちを散らしたぞ☆
ただただ、重かったんだ。
うん。
「華やかな淑女ばかりで、照れてしまうよ。初めまして、たった今紹介されたウィリアムだ。よろしくね。」
仕種は極めて優雅で、そして厭味がない。
「ウィリアムさま。それでは簡単過ぎます。」
「そうかい? うーん、そうだね。これでも私は、この砂漠の端にある、ハイランド領を治める伯爵なんだ。……はは、そんなにすごい者じゃないけれど。」
「もぅ、最近はめっきり謙遜ばかりするようになって。」
「仕方ないじゃないか。ヴィーを訪ねるお客さま方が誰も彼も、彼方の存在じゃないか。」
「あら? 私がいけないの?」
「まさか。……でも、こちらのレディーのことも知らずに大それたことを言えるほど、私の身分は高くも低くもないのは、知っているだろう?」
「ふふっ、ええ……ええ。そうね、ごめんなさい。」
そして、ヴィヴィがパティに目を配る。
「ボクは花の女王のパトリツィア。パティちゃんってお呼びくださいな。」
「ほら! やっぱり、また私が知らない奔流じゃないか。……パティちゃん?」
「はい?」
「自分が、何者であるか、知っているんだね?」
「はい。ウィリアムさま。……ヴィヴィお姉さま、ステキな方ね。」
「当然よ。」
「ボクは……『最弱』。」
それは、深海に潜む盲目の気配。
それは、闇夜で感じる靄の触覚。
それは、逆転し裏切る抽象概念。
それは、借り物で着飾り潜む者。
それが、最弱の奔流。その権能。
「知謀の? 化身とかいうお爺ちゃんに会いに行ってって頼まれた、使者なのよ!」
~to be continued~
明日から、三連休らしいので、6時18時の一日二回更新していきますよーっ><
がんばる!