32. 前作主人公にゎ……勝てなかったょ……。
あれ?
もしかして。
いつの間にか、パティちゃんが無双してるって気付いちゃった?
ねえねえ、気付いちゃったりしちゃったりしちゃったりした??
「え……? 弱い者イジメ……??」
「そう。人とは、中間者とは、何者にも染まり何者でもないからこそ、中間者なの。此方どもみたいな何者かではない弱者。だから、イジメちゃダメ。」
「ちぇー。」
仕方がないと、ドロリと崩れ続ける闇を引っ込め……たかった。
「蛇。もういいから。」
『それで?』
「それでじゃないよ! ボクに負けた蛇なんだから、帰るの!」
『我が権能は破壊と破滅の絶望と救済である。』
「だからなに!?」
『まだ、何も為していない。』
「そんなの――」
『我が権能を蔑ろに侮辱するか? 花を鬻ぎ売らぬ女王。』
「そんなこと!」
ドロリと。
闇がヘドロの影を広げて総を飲み込むのだろう。
「ちょ! ――シルフお姉、」
それは虚しい絶叫だった。
邪龍。
その存在は、神代の泥濘にして、旱魃の憎悪の具象。
知覚したときには、手遅れの理不尽そのものだ。
ゆえに。
パティ程度の理不尽では、実存を溶かしつつある現象に手を伸ばしても、残りのあと1センチが届くハズもない――
――ハズだった。
「ごきげんよう。」
凛とした、ソプラノだった。
プラチナシルバーのブロンドが軽やかに空を躍る。
アレキサンドライトよろしく、妖しく悩ましいヘーゼルの瞳。
フリルたっぷりの純白に身を包んだ花盛りの乙女。
有無を言わさぬ、場の支配。
隔絶的な重圧。
それは。
クィーン・ヴィヴィアン・マリーゴールド・ククル=カン・ガルド・ドゥ・ルクスリア。
吸着の化身、その者である。
軽やかに現れて、フワリと降りて闇を照らし出した。
「あら、ヴィヴィじゃない。」
「ごきげんようシルフ伯母さま。……戯れが過ぎるのではないかしら?」
重圧。
ただただ、伸し掛かる何かが重くて動けない。
『動けぬ……っ。』
それは、邪龍含め一切の例外なく、謁見の間の総てを支配した、、、かに思えた。
唯一。
妙齢の魔女、マダム・シルヴィア・ククル=カン東方女公爵だけが、何事もないかのように、理不尽だった。
「此方はそう思わないの。……パティ、触れなさい。」
「くっ。」
しかしパティちゃんは動けない。
いや、理不尽を上回るメスガキの意志の強さで、ミリ単位で動けている!
「そもそも、ヴィヴィが来なくても、此方が足踏みひとつくらい鳴らしていたの。」
そして、膨大とも思えるほど1センチを埋めて、パティは邪龍に触れた。
ドクン。
ドクン。
『がっ――な、にを!』
ドクン♡♡
「あはっ♡♡」
それは、パティちゃんの指。
感度3,000倍の快楽。
それが邪龍の背筋、その龍脈に快楽の雷を通して、契約で繋がったパティちゃんに溢れた愉悦が流れ込んだ、というだけのこと。
ただ、それだけのことで、理不尽の輪郭は形を保てなくなった。
そして淫紋も元の聖杯じみた、二匹の蛇が連なるハートマークに戻るのだ。
「堕ちちゃえ! バカヘビっ♡♡ ばーか。ばーかっ♡♡」
ドロリと、闇が溶けて消えた。
瞬間。
重圧も消えてなくなった。
「……それで、シルフ伯母さま。私にもこちらのレディをご紹介くださらないかしら?」
「パティのこと?」
「パティちゃんというの?」
その掛け合いに、パティが入らないワケがない。
「ボクは、パトリツィア・デル・フィオーレ。パティちゃんとお呼びなさい!」
その、厚顔不遜の名乗りを前に、当代最高戦力の魔導師、ヴィヴィは大輪の花の笑顔で以って好意と好奇心の眼差しを向けるのだ。
「まあ! まあまあ! ステキで可愛らしいお名前ね! 私はヴィヴィアン・マリーゴールド。私も、神代で砂漠の女王、墓標の守手を担っているのよ。」
~to be continued~
冬休みはいかがでしたか?
明日から、通常運転になりますっ><
つまり、一日一回の夜6時更新ですっ><





