11. え? 誰? いやマジで誰??
諸君らは童殺服、つまり「童貞を殺す服」をご承知のことと存ずる。
今でこそ、なんでもかんでも言われているが、元はお尻まで背中が丸見えのノースリーブニットワンピのことだった。
実のところ、そのタイプの服は古来よりメスガキの標準装備であり、パティもまた、オープンバックの制服もどきに身を包んでいる……いや、前掛けよろしく身を隠しているのはご存知だろう。3話にも書いてあるから見直して来るのだ。
でね、まあ、パティはおっきなメロンを二つも抱えているわけ。制服っぽいデザインの前掛けだと生地が固いからかな、胸のあたりは乳袋未満の立体加工がされてるっぽいから、フィット感は良いみたい。
でもさ。
そこに、可愛い花柄のポーチを肩がけして、さらに、ギューッとストラップを引っ張っちゃうとね? 谷間にめっっっちゃ食い込んで、生地が真ん中に引っ張られるわけじゃん。
今、パティちゃんは無意識の乳首ピンチっていう、状態なの。
なぜか。
邪龍さんが出てきちゃったからだ!
「ぐふ……っ。ああ、せめて我が陛下が無残に食いちぎられてしまうのを、無力にも目に焼き付けるしかない最期を迎えたかったものです……うっ。」
いや、余裕かよ豚。
「豚!」
「この邪気、この圧力、この気配……拙豚には、意識を保っていられる保証がありま、」
糸が切れたように崩れ落ちた。
それは、二晩目を迎えようとした逢魔が時。街道の側、煮炊きの火を点そうとする時間。薄暮の影から、圧倒的で絶対的な闇が這いずり堕ちた。
「ぶt――」
――我が気配を持つは誰そや?――
「――ぁ、あ。あ、あ。あ。」
破壊と破滅の眷属。
火を司り、恐怖と絶望を振り撒く災厄。
魔王の眷属だ。
『お前か。』
脈絡なく、眼前にいた。
「――っっ!!??」
瞬間、『気配操作』を行えたのは、奇跡に近いだろう。
パティの本能が、邪なる龍の王の気配を奪い取った。
ゆえに、気配に飲まれて気を失う事態だけは、避けられた。
しかし、それを歯牙にもかけない宵闇の主。
しわ嗄れた、重いバスボイス。
『我が、牙の残骸。』
パティが暴虐の王の気配を纏ってなお、その存在は膨大であった。
夜が溶け出した忿怒。
『失われたそれを持つ汝は、誰そや。』
神代から存在する神話の存在。その言葉もまた、神話の一節と同義だった。
しかし。
いつの時代にも、そんな超常に逆らう者はいるものだ。
「パトリツィア・デル・フィオーレ。パティちゃんとお呼びなさい?」
不遜にも、高慢な見下しと嘲笑を隠しもしないロリ巨乳。
『メスガキ』の特性は、その呪いは、逆境において強がらずにはいられないという、死にたがりの行進そのものだった。
(い、言っちゃった……っ。ボクのバカバカぁ! ああもう! あーもうっ!!)
~to be continued~