1. えーっ!? 非力でか弱いロリに負ける山賊がいるんですか!?
世の中には度し難い――『変態』、という奇妙な生き物が存在する。
そう、私こと朝倉 ぷらすのことだ。
私のような変態が存在するために、このような物語が澄まし顔で上品振って、正義の眼球を舐め上げるのだ。
いいかい?
この物語の主人公は、『メスガキTS転生したハードリョナ属性持ちの、純情派清楚系ヤンデレ外道ロリ巨乳ビッチが、最弱能力なのに無双して、逆ハーレム作ってハ〇ハメされたい』のね?
大事な事だから、もっかい言うとね?
この物語の主人公は、『普段生意気なことを言っている、成長途中の女児(巨乳)なんだけど、本当は、真に認めた男にお仕置き調教されて、理解らせられたい』んだ。
屈折してて、ゴメンね。
でも、仕方がないんだ。
『メスガキ』の特性で、『性的な感情を向けられた相手に敗北した場合、否応なく発情し続ける雌犬になる』からなんだ。逆境には強いんだけど、まあ、『メスガキ』は敗北シーンを盛り上げるためだし? ねえ。
ゆえに主人公、パトリツィア・デル・フィオーレに敗北は許されない。
誰だって、アヘ顔ダブルピースのバッドエンドは回避したいじゃない?
え? ハッピーエンドの間違いじゃないかって? 世間ではそれを、メリーバッドエンドって言うんだっ><
「ふふん。……くっ。」
しかし、すでにピンチだパティちゃん!
山賊が一人で暮らす洞窟に潜り込んで、案の定見つかってこの様さ!
このままズタボロレイプ目エンドのパッケージングで出荷されちゃうのでしょうかっ><
「おいおい、さっきまでの威勢はどうした? あ? メスガキぃ!」
筋肉隆々、臭さMAX、お手本のような山賊。
最後に水浴びをしたのはいつ? そもそも、そのボロい服は洗濯してる? なんて聞きたくなるほど薄汚い容姿。剃ったことなど無いようなヒゲ。
ああ、こんな物語の冒頭で、わかりやすい敵キャラにパティちゃんは「ああんっ♡」なことや「だめっ♡ ゃ♡ や……だぁ♡」なことをされちゃうのでしょうか!?
いや、それも良いかもしれないね!
この山賊、この風貌だから当然、暴虐は一通り経験済みという、絵にかいたような存在で、かつては町への「ヒャッハー!」帰りに村へ立ち寄って、熟れる前の桃を、おやつ代わりに収穫して、蹂躙し尽くして放り出すような外道だった。しかも、ちょっと青かったのか、果汁が足りないことに不満を漏らしていたほどだ。
だけど何の心変わりか最近は、夢のログハウスのような小屋で、温かい手料理を用意する嫋やかな後ろ姿ばかり妄想している。
ニッコリと、優しい笑顔が振り向いてくれる場面ばかり、恋い焦がれている。
そして、そんな姿をかつての下っ端には晒せないと、独り表情筋を引き締める毎日だった。つまり一人暮らしってことだぞ。
そんな幻の端切れを追いかける山賊は、気丈にも睨み返すパティに一瞬だけ、そう、一瞬だけ、油断してしまったんだ。
パティから、好い女の匂いがしたから。
ゴクリと、生唾を飲み込んじゃったんだ。
その隙を、パティは見逃さなかったんだ。
「――っっ!?」
山賊は振り返る。後ろから急接近する殺気があった。
グサリ。
殺気だけが、あった。
「ばぁかっ!」
それはパティの罠。
パティの能力『気配操作』のなせる業。
「ぅぐ、ぐあああ……っ。お前! アサシンかああうぅぅ……っ。」
殺気もなく近寄ったパティのナイフが、山賊の肚に突き立った。
深く、深く。
「ぐっ。」
山賊は咄嗟に腕を振るって、パティを振りほどいて体勢を整えたい。
しかし、腸を掻き混ぜられる悍ましさが背筋を通り抜け、膂力の行使に精彩を欠いた。
だから、パティは簡単に山賊の背後を取れた。
ロリっ子の短い腕では山賊の腹周りに届かない。それでも、突き立ったナイフで掻っ捌くことは容易かった。
「ぐっ……ぐうっ!」
「このっ! 動くな! 臭ぇ!」
山賊は、振り解こうともナイフを取っ手代わりに纏わり付くパティをどうにかしたかった。腕に力が入らず、パティの手を掴んでも、どうにもできなかった。
いや、一つだけ方法があった。背中から倒れ込めば、パティも潰されたくないと離れ、仕切り直せるかもしれなかった。
ああ。しかし、やんぬるかな。
開いた口から、ボタボタと零れ落ちる肉体の欠片を失いたくなくて、本能が背中を丸めさせていた。パティにすれば、引き抜いて背中に刃を突き立てるも良し、このまま内臓を破壊するのも良し、という勝ち確状態だった。
勝敗は、ここに決した。
メスガキは、マセガキは、勝ち確で哄笑する。
「アハハハハハ! なに? どうしたの? さっきまでの威勢はどうしたの? ヤダー! 入れる事はあっても、入れられる事がそうそうないからって、ダサ過ぎない!?」
「ぐ……ふぐっ。ガ……キがぁ……っ。」
パティは、もはや、見ているだけで地獄まで片道切符の山賊に、張り付いている必要は無いとばかりに距離をとる。
「ねえねえ、最期にさ、教えてくんない?」
言葉とともに、パティは自分の胸を揉み拉いた。
見せ付けるように、煽情的に、巨乳を歪ませた。
「ボクのおっぱいの感触――どうだった?? 気持ち良かった? ねえねえ、さっき、背中で感じてたでしょー?」
「く……そが……っ。」
肚を抱えるように、額を付けた土下座スタイルの山賊が、崩れて倒れ込んだ。
脂汗が汚く、浅い息は緩慢になっていく。
そのまま、山賊はゆっくりと事切れた。
「アハハハハハ! ばぁかっ! ばーかっ! ばーかあああっ!」
狂ったように笑うパティの声が、山賊が独り潜んでいた洞窟の奥に響いた。
「ばぁかっ! ばかあっ! ばか。……ば、か。……くそ、くそぉ……っ。」
次第に、涙声が混じる。
「くそ、こわ、怖かった。怖かったよバカぁ。……う、ぐすっ。」
童女の顔立ちに、肉欲を唆る体型は、パティに安寧を与えなかった。
肉体を再構築されて放り出された異世界に、親などの庇護がなかった。
パティには『メスガキ』の特性が、付いて回った。
ゆえに。
パティは、唯の一度たりとも心を折られて、敗北することは、許されていなかった。
ゆえに、もう一度言おう。
この物語の主人公、パトリツィア・デル・フィオーレは、『運命に課された己が逆境を跳ね退けて、幸せをつかみ取りたいと願う、純真無垢な少女』そのものである。ただ、ちょっとだけ性癖が捩曲がっているだけなのだ。
いや、そもそも転生前は男だったし、純真無垢な少女かどうかも怪しいか?
というか、そのせいでこうなったワケだし、自業自得か?
ふむ。
まあ、ロリは可愛いし、可愛いは正義だし?
パティちゃん、がんばえーって感じですね。
「ぐす……っ。臭い、お風呂入りたい、重いから運べないぃ、、、もうヤだよぉ。。。」
強く生きろ!
~to be continued~
初めの一話目なのでちょっと長めですが、これからは1,000~2,000文字くらいでサクサク読めますよ!
略称「メスのわ」! ぜひぜひ応援してくださいっ><
感想が、燃料になるのです(⋈◍>◡<◍)。✧♡
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