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町に怪奇が現れたら  作者: 墨崎游弥
異界へのポータル編
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20節 作戦前夜

ミテミンに一足先に投稿したアイツが出てきます。

 キリオと杏奈だけが残る春月支部に訪れる3人の男子高校生。その姿はもはや見慣れたものだったが、今回ばかりは事情が違っていた。

 今春月支部にいた人物はキリオではなく杏奈だった。


「どうした?また何か情報でも掴んだのか?」


 と、杏奈は言った。


「そうですよ。俺の通う高校にも異界の穴がありました。しかも人が消えています、あの中に。その影響でイデア能力に覚醒した人もいるんですよ」


「それ、俺です。ずっと言っていませんでしたけど」


 杏助に続いて悠平が言った。

 すると、杏奈は何か確信を得たような表情を浮かべる。


「やっと推測から確信に変わった。キリオさんと彰と3人で高校の近くを調べてみたのだけど、金色のガスの出どころを推定していたにすぎなかったんだよ。見つけてくれてありがとう」


 杏奈は言った。


「それで、私からも話がある。君たちを信頼して――ゲート付近の調査に協力してほしい。晴翔くんは都心部、悠平くんはケテルハイム近く、杏助は新しく見つかったゲートのある場所……霊皇神社の調査を頼む。それぞれ魔物ハンターが同行するから戦闘については多分問題ない。決行するのは明日」


 状況は大きく動いていた。これも杏奈にとっては苦渋の決断だった。だが、11人の構成員を失い戦力も削がれたこの状態で、本部やほかの支部からの支援も多くは望めない状況で。杏奈は決断を下さざるを得なかった。


「いいか?君たちは絶対に死んではいけない。もし何かあれば同行する魔物ハンターに任せて逃げるんだ。君たちと同じ能力を持っているとはいえ、逃げなかったから殺された者だっている」


 と、杏奈はつづけた。

 彼女の言葉は、すでに春月市が安全な場所ではないということを意味していた。いや、そもそもこの世に安全な場所など存在しない。どの場所であろうとも、死の可能性は誰にでも存在している。




 春月川の上流。木々に覆われたその場所には小さな民家が1軒だけあった。

 民家の前には車がとめられ、2人の男――杏哉と零が降りる。2人はトランクから遺体を出し、民家へと運び込む。


「持ってきたよ、清映さん。男だけど供物にはなるんだろう?」


 ゴッ、と音を立てて遺体が床に放り出された。


「ああ。供物にはなるよ。供物にはね。使い道がそれしかないというのが残念だ。それを抜きにしても君たちはよくやってくれた」


 清映と呼ばれた和装の男は言った。

 彼は祭壇の前で向き直り、杏哉たちの持ち帰った遺体を見た。その顔はまるで、並べられたものを物色するかのようだった。


「聞いてくださいよォ。こいつら、春月の魔物ハンターだったんすよ。俺、ちょっと警戒したんすけど案外そうでもありませんでしたね」


「魔物ハンターだって?」


 清映はその言葉に反応した。

 彼は魔物ハンターに浅からぬ因縁がある。だからこその反応だった。清映の体から白い霧のようなイデアが出て来たかと思うと、やがて刀の形を成した。あ、


「殺さなくてはな。彼らに恨みもある。それ以上に、我々が呪いを解くために邪魔なのだよ。いつだったか忘れたが殺した魔物ハンターのように……」


 強者である清映を前にした零はほんの少し気おされていた。その一方で杏哉は涼しい顔をしている。


(さて、どうするかな。こいつらに杏奈と杏助を殺させるのは惜しいな。それに……)


 杏哉は清映から零に視線を移した。


「あ、そうだ。こいつらはどんな力を使ってきたのかな?」


「あいつらが言うにはアレだ。イデアってやつ。金色の霧で覚醒するって話だろ?」


「ふうん……蒼炎ヶ沼のポータルとはまた違うルートで覚醒した感じか。困ったねえ、清映さん。やっぱり因縁の深い春月にも現れていたみたいだね」


 と、杏哉はどこか他人事であるかのように言った。


「現れた、か。その場所はどこだ。私が、この太刀でポータルもろとも両断する……」


「まずは春月川沿いの廃墟。ここは誰がやったか7割が削られたようになっていて、ポータルまで露出しているから急いだほうがいいみたいだよ。それで、もう一つは霊皇神社。そっちは人の出入りも少ないから後回しでいいかもしれない。

 俺としては金色の霧にあてられてイデアに目覚める人が増えちゃうのもよく思っていないんだよねえ」


 杏哉は言う。その言葉を聞いた清映はすっと立ち上がった。


「今日……というわけにいかんが近いうちにあの廃墟へ行く。それと、もし我々のことを嗅ぎまわる者がいるのならばどんな手段を使ってでも消すぞ。いいな?」


「はいはい。俺はまた供物を探しに行ってくるよ。また面白い駒を見つけてしまってね……確か、非公認魔物ハンターだったかな?」


清映にも杏哉という男の考えることはわからなかった。杏哉は見た目以上に腹の底が読めないのだ。


「そうか。お前が有能だということは分かっているが、調子に乗るなよ。いくら新たな長となるに値するお前でも、な」


「わかってるって。俺が今まで反逆したことなんてないだろう?」



明日は2話連投します。していなかったら「おい黒崎2話連投って言っただろ」と言ってください。多分目が覚めます。

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