エピローグ 新聞記事より抜粋
エピローグ 新聞記事より抜粋
今回は魔宮攻略によって、再び結婚式を挙げるカップルに大人気となったツクヨミ街の教会の支配人にインタビューさせていただきました。
若干二十歳で新支配人に抜擢されたヨルさんは、デザイナーも兼任されており、この日は黒のパンツスーツにショートカットの黒髪から華奢なピアスを覗かせて、胸元にはアンティークテイストのシンプルなネックレス。アクセサリーはヨルさんの手がけるブランド「Princess Knight」のものです。
そんなヨルさんの仕事からプライベートまで、今回は迫ってみようと思います!
Q 支配人権デザイナーに大抜擢されてプレッシャーは感じられなかったのでしょうか?
A お話をいただいたときは本当に驚きました。プレッシャーは日々感じていますが、子供の頃からこの教会でデザイナーになるのが夢だったので嬉しかったです。まさか支配人も任されるとは思いませんでしたが(笑)。何せ若輩者ですから、関係者やスタッフに助けられることも、教わることもたくさんあって、毎日が修行です。ですが、うちを選んでくださったカップルの方にご満足いただける挙式をとの思いで全力を尽くしております。
四季が暦の上だけでなくなった現在、人気の春挙式に向けて新しいガーデンのお披露目を控えているそうです。教会を囲む森を生かした、童話の世界のようなガーデンだとか。いまから来年が楽しみですね。
Q オーダーメイドのドレスも人気のひとつですよね、デザイナーを目指すきっかけは?
A 実は昔、長期の入院生活をしておりまして。その頃の楽しみが、絵本と絵を描くことだったんです。このお話の主人公はこんな服、と想像して服の絵ばかり描いていました。きっかけは、友人に小物を作ったりしてすごく喜ばれたのと、自分の作ったもので誰かを可愛くする気持ちを、嬉しそうな友人に教わりました。
Q 素敵なエピソードですね。もともと洋裁や裁縫がお好きだったのですか?
A 好きでしたね。細かい作業が苦にならない性格で、凝り性だったんです。
現在ドレスの仕立てはコトリ小町の胡桃之工房さんと協力しているのですが、工房長のケイトさんには非常に助けられています。アイデアも、それにコトリ小町の市場は食事も美味しいんですよね。
長い闘病生活を乗り越え、幼い頃からの夢を叶えたヨルさん。
お話すればするほど、まさに再興を果たしたツクヨミ街にふさわしい素敵な女性だと納得するばかりです。
Q ドレス、挙式ともに人気のコンセプト「花嫁さまはお姫さま」誕生のきっかけは?
A 多くの方に支持していただいて本当に嬉しく思っております。自分は結婚式は女の子の夢が叶う場所だと思っているんです。将来の夢は? って子どもに聞くと、お嫁さんって女の子は答えるじゃないですか。お婿さんと答える男の子はいないですけど(笑)。大人になると、結婚が難しいものに思えてしまうかもしれないけれど、だからこそ、小さい頃に夢見たお姫さまのような花嫁になってほしいと思っています。きっと、幸せな結婚式の思い出はその後の人生を支えてくれると、自分は信じていますから。
Q ブランド名の「Princess Knight」の由来や込められた意味などは? 恥ずかしながら「お姫さまの夜」だと思っていたのですが、Knightは騎士ですよね。
A よく勘違いされますね(笑)。姫と騎士ではなく、戦うお姫さまという意味を込めました。童話のお姫さまって、一見受身に見えますが、とんでもない泥沼だろうと修羅場だろうと乗り越えて、最後には必ずハッピーエンドで物語を締めますよね。それは、見えない剣を持って戦った結果だと思うんです。女性の戦いは、目に見えないものばかりですから……なので、勇敢なお姫さまのように幸せを掴むための戦闘服として、とびきり可愛らしい、美しいドレスで花嫁さまのこれからを応援したいという気持ちが由来です。
そんなお姫さまになりたい! ……失礼、つい願望が出てしまいました(笑)
ここからはプライベートに迫ってみたいと思います。
Q 子供の頃から夢はデザイナーだったそうですが、どんなお子さんだったのですか?
A ものすごく嫌味な子供でしたね。斜に構えたというのか、子供の頃は病気ばかりしていたので今思えば強がっていたようにも思います。おしゃれですか? 全然しないどころか、男の子の服ばっかり着てました。誰かの服を選ぶのは子供の頃から好きでしたね。
Q アイデアや疲れで息詰まった時にすることはありますか?
A 寝ます。だいたいそういうときの自分は、簡単なことを難しく考えてしまったり、小さな悩みを巨大化させてしまっているときなので。やらなければならないことや、何をしたいかなどを箇条書きにしていったり、過去に自分が描いて気に入っているデザインを見返したりもします。でも一番効くのは睡眠ですね。何も考えずにお風呂に浸かって、身体の温かいうちに布団に入る。ただ冬はいいのですが、夏は暑いので汗がなかなか引かないのです。汗をかくのも自分の中ではストレス発散に……すみません、息詰まった時にすることでしたね。いっそ頭を抱えてみますね、案外冷静になれるんですよ。
Q たくさんのカップルを見守ってきたと思いますが、ヨルさんに大切なひとはいますか?
A ボクの……失礼、昔の癖ってうっかり出てしまうものですね。
デザイナーになるきっかけをくれた友人です。自分のデザインの専属モデル第一号でした。逃げられちゃいましたけど、夢を追いかけている彼女は昔から変わらず、とびっきり可愛くて美人で、とても心優しい自慢の友人です。自分は強がってばかりでしたから彼女にも隠していましたが、とても泣き虫な彼女に、自分はいつも救われていたんです。毎日病室に来てくれるのが嬉しくて、時計とにらめっこしながら待っていましたね。憧れていたんです。初恋に似た気持ちだったのかもしれませんね。
残念ながら恋人はいませんよと、いたずらっぽくわらうヨルさん。
ご友人とは現在も連絡を取り合っているとか。
いつかご友人の結婚式をプロデュースするのが現在の夢だそうです。
Q では最後に、読者の方々に一言お願いします。
A 皆さんのおかげでツクヨミ街はかつての活気を取り戻すことができました。自分ひとりでは決して成し遂げられなかったことです。これからも、幸せを作り上げるお手伝いをスタッフ一同心を込めてさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
最後にトレジャーハンター「魔女の末裔」に特別の感謝と、愛を込めて。
これからの活躍がますます期待される支配人権デザイナーのヨルさん、そして再興を果たしたツクヨミ街から目を離せませんね。
ご意見ご感想をお待ちしております。
fin.
2014.12.30.
女の子が可愛く格好良く男の子の手を引いていく。
そんな物語があったっていいじゃないかと思いました。強かさは女の子の特権のような気がします。
続きを書きたいなあと思っているお話の一つです。
何か届けられたのなら、そんな幸いはありません。
読んで下さってありがとうございました!
水瀬透