5、 『ロビー・コート』でお茶
このラウンジはハイティーで有名な『ローズ・ベランダ』と共に英国スタイルの素敵な雰囲気。
シンガポール在住の日本人マダム御用達で、よくハイティーに訪れるらしい。
ウェートレスの女性はロングスリットの入ったチャイナドレスを身に付けていて、身のこなしも一流の感じだった。
メニューを持って来てくれたので、中を一通り眺めたが、ゆりが食べたいと言っていたようなケーキ類は全く載っていなかった。
昼間ならまだしも、こんな夜遅い時間にケーキなど注文するお客様はいないからだろう。
ラウンジでは皆、ビールやカクテルのグラスを傾けて語り合っていた。
その雰囲気の中、ウェートレスの女性を呼んで一応ケーキ類があるか尋ねると意外にも、
「ありますよ」という答えが返ってきた。
場違いな私達に、嫌な顔一つぜず対応してくれるのだから、シャングリ・ラ・ホテルは素晴らしいなぁ。
そのお陰で夜遅い時間 だったけれど、ゆりは念願のケーキと紅茶、私達はコーヒーを注文する事が出きた。
少し待っていたら、何やら大きなお皿と、これまた大きなティーポットとカップが一緒に運ばれて来た。
そのお皿は直径が30センチはありそうな大きさで、美味しそうなチーズケーキが乗っていた。
ストロベリーソースが掛けられ、周りにはそのソースで模様が描かれていた。
夜遅くにもかかわらず念願の、しかもこんな豪華なケーキが食べられたので、三人共感激してしまった。
更に感激したのは、そのビッグな、ティーポットだった。お湯を入れる部分の直径が20センチはありそうな大きさで、素敵な模様が描かれていて、見るからに豪華だった。
はしたないと思いながらも、思わずポットを持ち上げて下側に書いてあるメーカー名を覗き込んでみると、な、なんとそのティーポットは、ウェッジ・ウッド社製だったのだ。
それは品格がある訳だ。 その後私達のコーヒーが運ばれて来たのだが、コーヒーだけ注文したのに、チリチップや、ナッツ類が沢山入った盛り合わせも一緒に付いて来た。
ナッツ類は注文していないので、間違って運ばれて来たのかな?と思ってメニューを見ると、コーヒーにサービスで付いてくると書いてあった。そうかぁ。
サービスと解ると現金なものでパクパクとナッツを摘み、美味しいコーヒーを飲んでゆったりとした時間を過ごした。
メニューに載っていない食べ物を、嫌な顔一つせず何とかしてお客さんに提供しようという姿勢は、正に一流ホテルの証だと思った。
やはり、シャングリ・ラはその名の通り《桃源郷》だったのだ。
その後は、私達は直ぐに素敵なバスに漬かり、疲れた身体をゆっくりと癒してから眠りに着いた。
眠りに着いた。