#4 -ability-
それから他の状況や説明を聞いた。
どうやら簡単にまとめると、
・俺はセントウレスという国を守るために拉致され連れてこられた
・俺には魔術が使える才能があるらしい
・俺を誘拐した黒衣装の女の名前はセリウス。
全国から魔術の波長の合う特別な人材を連れてきている。
・日本にいた俺の存在は、魔術によって一時的に消去されている
・既に拉致誘拐されてから2日経っている。
・外国なのに日本語で会話できるのは、
特別な魔術によってこの室内が言語統一化プログラムされている。
・ここは非公式独立魔術式部隊(U.I.M)のアジト。
ぐらいかな。
あまりの複雑な情報量に混乱している。
俺が日本にいた時は誰からも愛されてこなかった……。
しかしこの国の人間にとっては、俺を必要な人間と思っていてくれている。
特別な未練もないし、いっそのことこの国を救って英雄にでもなりたい。
その思いはこの国を助けたいという、"協力"につながった。
「わかりました。俺、やります!」
「ありがとう……さっそくだけど、あなたには私が直々に手取り足取り教えてあげるわ」
「手取り足取り……」
不覚、にやけてしまった。
にやける状況ではないのに。
「自己紹介がまだだったわね、私の名前はミハエル。このU.I.Mの現リーダーよ」
「俺の名前は村田千尋です」
「そう、チヒロね。よろしく」
簡単な自己紹介が終わりつつ、俺はミハエルと一緒に初心者ルームへと向かった。
「そういえばアジトなのに、さっきから人が見えませんけど……」
「このアジトは敵に襲われても逃げられように、複雑な細い道がたくさんあるの。だから人とあまり出羽無いのよ」
「今、U.I.Mって何人ぐらいいるんですか」
「そうね、あなたを入れて丁度100人ぐらいかしらね。中には、外でトレーニングしている者もいるのよ」
「い、意外と多いんですね」
そして初心者ルームへたどり着く。
近未来的な自動ドアはビジュアルとして演出しているが、このアジトには似合わない。
中へ入ると、意外と広い。
特に特別なものも置いてなく、まるで学校の体育館みたいだ。
「あの、ここで一体何をするんですか?」
「今からあなたには、現段階でどれぐらい魔術が使えるかどうかテストするの」
「テ、テストですか……自信ないですけど」
「まぁ落ち着いて私の指示する通り、やってちょうだい。それだけのことよ」
そう言うと、彼女は呪文らしき言葉を唱えた。
「ニママ・クモムオ・ヲテベス クッジマン・リウコ!」
空中に謎の魔方陣がたくさん現れ、光で輝きを放っている剣が落ちてきた。
そして床に刺さる。まるでアーサー王伝説に出てくるエクスカリバーのようだ。
「さぁチヒロ。その剣を取ってみせなさい」
「これをですか?」
剣を握り、床から抜くその姿はまさにアーサー王そのもの。
しかし思った以上に固く刺さり、抜けない。
「あの……抜けないですよ」
「いいからそのまま抜いてみなさい」
「もう力でないんだけど……」
そういや俺、体力ないの忘れてた……。
思い切り力を入れても全く動く気配がない。
半ば諦めかけたその瞬間、その剣から特別な力が俺の体内に染み込んでくるような感覚になった。
そして……
「これは……予想以上」
俺の全身は青いオーラに纏い、剣から魔力の源を受け取っている感じがした。