#3 -conversation-
「まず、あなたを誘拐した理由より私たちの正体について教えてあげるわ」
「正体……」
「私たちは非公式独立魔術式部隊っていうチームに属しているの」
「ま、魔術!?」
拉致誘拐された時点でおかしいとは思ったが、ここにきて魔法なんて話が出たらますますフィクション性が出てしまうじゃないか。
そんな一時の疑問をさえぎるように女は話を再開する。
「国から支援・許可を得ていない小さな軍隊よ」
「は、はぁ……」
「何故国から認められてないかというと、私たちがオカルト系の技を使うから」
「え、別にいいじゃないんですか?国のために戦ってるんですよね?魔法使おうが、貢献してるなら」
「"魔法"という概念が私たちの国では法律で罰せられるからよ」
ここで一つ疑問が走った。
「え?ここって日本ですよね?」
「……違うわよ、ここはセントレウス」
「え?外国!?」
「まぁ、そうなるわね」
なんてこった。俺、誘拐されて外国に飛ばされたのか。
おまけにセントウレス?
どこにあるのかすら見たことも存在すら知らないよ。
「ちなみにその国はどこらへんにあるんですか?」
話を続けた。
「そうね、あなたのいた"日本"っていう国からだと東に進んで約1000kmぐらいの場所ね」
「太平洋?そんな国ありましたっけ?」
「知らなくて当然よ、私たちが国の存在を他国に知られないように消しているからよ」
「それで、そのセントウレスは今、同じ魔術を使う複数の他国から襲撃を受けているの」
いつから我が世界はこんなファンタジーワールドになったんだ……。
「だから私たちは今、世界から更なる魔術が使える人材をこうして拾ってきているの」
「ってことは俺も魔法が使えるからこうして呼ばれてきたってことなんですか?」
「ええ、あなたを誘拐した女覚えてる?」
「はい。顔はマスクつけてて見えませんでしたけど」
「あの子はスカウト役なの。全世界中から魔術と波長のある才能ある人物を探してもらってるの」
「じゃあ、僕は魔術が使えるんですか?」
「才能としてはね。でも現段階では無理ね。だからさっきみたいに練習を重ねて魔術を使えるようにしているの」
「でもさっきしていたのって剣道っぽかったですよね」
「あれは魔術紺という特殊なステータスが含まれている剣。あれを才能ある人がずっと使いこなしていけば次第と本人にも魔術が使えるようになるの」
「だからさっきの人たちはみんな世界中から集まった魔法の才能がある人たちよ」
更なる疑問。
「ん?そういや、なんで世界中から集まってるのに俺と貴方も普通に日本語で話せてるんですか?」
「それも魔術のおかげよ。ここは私たちのアジトなんだけど、アジト全体に魔術がかかっているの。だからここにいる間は人種関係なく全ての言語を統一できるの」
「んじゃ、実際には俺は日本語で話していて、あなたは他国の言葉で話してるんですか?」
「ええ、そうよ」
俺はてっきり、この人もさっきの男もアジア人っぽい顔で話していたから普通に日本人かと思っていたが……。
「だから、ざっくり説明すると、あなたにはこの国を守ってもらうために連れてきたの」
「な、なんですか。それ。それに僕もいきなり拉致られて家族とか周りの友達も心配しているんじゃ……」
「あぁ、それなら問題ないわ。私の魔術で、あなたの存在を一時的に消しておいてあげたから」
「ええ!?困りますよ!じゃあ今、僕は存在してないことになってるんですか!?」
「落ち着きなさい。一時的に消しているだけだから。この国を最後まで守り切って帰還するごろになったら元に戻してあげるから」
「そういう問題でも……」
こじれる疑問の解決策はまだまだかかりそうだった。