#2 -labyrinth-
男はロープを解いた。
「付いて来い」
そう言うと、男はドアを開き、俺を密室から解放した。
外は入り組んだ廊下だ。まるで迷宮のよう。
そして気づいた。さっきまでの倉庫は外ではなく室内にある倉庫だという事に。
オレンジピンクが照らすその入り組んだ廊下は不気味さを演出している。
「ここから先はとても複雑な通路になっている。しっかりついてこないと迷うぞ。……それと、逃げようなんて思うな。この場所にいる限り、貴様に逃げ道などない」
とても逃げようなんて考えじゃない。そもそも逃げられる状況じゃなかった。
これから一体何が待ち受けているのか。
しばらく歩くと、
「ここだ」
通路の一番奥にあるであろう部屋の扉の前で止まった。
なにやら他の部屋のドアと違い扉の構造が違う。かなり大きい。
ゴクリ
ここで拷問でもされるのか?人体改造でもされるのか?
無限な可能性のあるその先に、俺は唾を飲んだ。
そして静かにドアが開いていく。
中に待ち受けていたのは、なにやら見慣れない剣を使って、ペア同士で数十人が戦っている。練習している様子が見えた。
そして全てのペアを見守るコーチ役なんだろうか、権威の高そうな女性が見えた。
「隊長、新入り連れてきました!」
「うむ……ごくろう」
隊長?このコーチっぽいのをしている女性が隊長なのか?
「皆 、練習止め!一旦休憩!」
そう言うと、剣士たちは剣を下ろし部屋の端の方へ移動した。
そして、その女性は俺の目の前にやって来た。
「君が新入り君ね」
「し……新入り?」
未だに理解できない。聞き返してしまった。
「クラウド、あとの担当はあたしがするわ。あなたは、ここの担当をお願いするわ」
「は、かしこまりました」
「じゃあ新入り君、私に付いてきてくれる?」
そう言うと女性は俺の手を繋いで、ゆっくり歩き始めた。
まるで俺が女の子みたいに優しく守られてるというか。
ついていった場所はもう1つの部屋。
「ここが私たちのプライベートルームよ」
案内された部屋はさっきの部屋より小さかったが、ソファにロッカー、モニターにテーブル、奥には専用エレベーターもある。くつろぐには充実している。
「あ……あの」
「ん?」
「説明してもらえますか。俺を誘拐した理由を」
「丁度これからする予定だったの」
美しい体格、優しげな表情、そして妖艶な声。
これは間違いなく惚れてしまう。
「じゃあ一から説明するわね……」