#1 -confinement-
「悪いが、眠っててくれ」
彼女の口から告げられ、ハンカチで鼻と口を覆った。
そして、やがて俺は眠りについた。
………………
長い沈黙の中。
俺は目を覚ました。
小さな木製の椅子に座っている。
手は椅子の背もたれにロープで結ばれている。
周りには乱雑した荷物や道具がたくさんある。
おそらく倉庫だろうか。若干工場臭いのも、うなずける。
それにしても、まさか本当に拉致誘拐されるなんて思ってなかったな。
まぁ実際思ってたような手荒なものではなかったけど。
目が覚めてから1時間ぐらい経った。
よく考えりゃ今は冬だ。暖房もついてない密室に閉じ込められたんだ。
寒いのは当たり前だ。
しばらくして、目の前にあるドアが開いた。
一瞬にして身体の筋肉に緊張が走った。
何をされるかわかったもんじゃない。
ドアを開けたのは、俺を誘拐したあの女とは違った。
整った顔、決まった髪、そして高身長。その姿はまさに美男子。
俺を拉致した女と同じくこの男も全身黒衣装だ。
ただ女と違いマスクをつけていない。顔が見えている。
おそらく20歳前後だろう。俺より年上なのは分かる。
「……おい」
重たい沈黙の中で放った一言。
「な、なんでしょう……?」
拉致誘拐されてる身としては、上から目線で発言は出来ない。
そんな状況でそんな口調で言ったら殺されるに決まってる。
なんたって拉致誘拐だからな。何か重大な目的がない限り、そんなことはしないだろう。
「今から君を"ヴァイオメント"として仲間にする」
けだるさを持った口調で、そう言った。
心の中で激しくつっこみたかった。
ヴァイオメントって何だ。
「あの……、突然なんなんですか?いきなり俺をさらって。気づけばこんな倉庫の中に閉じ込めて、あなたたちの目的は一体……」
言い切る前に、男は俺に拳銃を突き出した。
「つべこべいうな、貴様に選ぶ権利など、無い――」
そうして俺は、何一つ理解できず"ヴァイオメント"となった。